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海洋堂の宮脇修一専務(海洋堂ホビーランド「プラモの山」の前で)

海洋堂の宮脇修一専務(海洋堂ホビーランド「プラモの山」の前で)

創業57年の集大成として、1万点以上のコレクションを集めた、フィギュアのテーマパークをオープンした、フィギュアメーカーの「海洋堂」(大阪府門真市)。模型好きが集まり、自分たちが欲しい造形物を作ることだけを優先してきたビジネススタイルは異色だ。「マーケティングは不要」と言い切る同社は、小手先の戦略に走らず、「造形師」と呼ばれる、フィギュアの原型を生み出すクリエーターそれぞれの才能を引き出す形で、ヒット商品を生み出してきた。

フィギュアを文化に 海洋堂「好き」極めた破天荒経営(上)

新型コロナウイルス禍を背景に家で過ごす時間が増え、巣ごもり消費が広がる中、プラモデルやカプセルフィギュアが売れ行きを伸ばしている。業績不振で撤退した店舗跡に、カプセルフィギュアを売るカプセル自動販売機の専門店が入るケースも目立ってきた。大阪府門真市に開業したテーマパーク「海洋堂ホビーランド」にもコーナーが登場し、人気を集めている。

フィギュアを身近な存在へと変えたのが、おまけ付き菓子の食玩(食品玩具)だ。フルタ製菓の卵型チョコレート「チョコエッグ」は、海洋堂が知名度を高めるきっかけとなった。

チョココエッグのヒットは、動物フィギュアは売れないという常識を覆したが、そもそも天才的造形師がいなければ、空前のヒットも生まれなかった。宮脇修一専務が才能にほれ込んだ造形師、松村しのぶ氏の世界観と表現力があってこそのヒットだったという。

松村氏は1987年に同社へ入社。そのいきさつも伝説的だ。アルバイトの面接で置いていったトラや恐竜の作品が宮脇専務の目に止まり、社員に採用されたという。

当時、動物フィギュアは商売にならなかったが、「松村君の才能はすばらしかった。彼が海洋堂にいることがブランド力となるので、いずれは動物や恐竜をやるべきだという思いはずっとあった」と振り返る。つまり、最初から「松村氏ありき」の企画だったわけだ。造形師の持ち味を生かす海洋堂らしい話だ。

松村氏は生物造形とイラストが得意で、ほ乳類、は虫類、昆虫、魚、恐竜など、幅広く生き物のフィギュア制作が得意。ニューヨークのアメリカ自然史博物館の依頼を受けて、恐竜の復元モデルを製作するほどの実力者で、海外からの評価も高い。チョコエッグの第1弾を「動物シリーズ」に決めたのも、「動物オタクであり、動物を見る視点が常人を超越している彼に任せれば、すごいものが作れるだろう」という、宮脇専務のひらめきが発端だった。

海洋堂のものづくりスタイルは、個人の人間性や作家性、存在感をとことん大事にすることにある。見込んだ造形師の才能に期待し、思い通りに作らせてみる。創業者の宮脇修氏が「海洋堂が評価されている一番の基本」と自慢するのが、松村氏ら筋金入りの造形師たちなのだ。

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