ポップアップトースターを海外進出の足掛かりに

高級生食パンでのテストはちょっと惜しいように思えたが、レトロでポップかつ焼き色が見えるデザインはユニークで、キッチンでも映える。とはいえ今日、ポップアップトースターという選択はなかなかの決断ではないだろうか。

日本では昔から扉を手前に引くタイプの「オーブントースター」が主流で、バルミューダが15年に「バルミューダ ザ・トースター」を発売して高級トースターブームを巻き起こし、現在もそれが続いている。千石も15年9月に「アラジン グラファイト グリル&トースター」を投入し、0.2秒で発熱する独自の遠赤グラファイトとレトロでおしゃれなデザインが人気を博している。今回も21年4月のポップアップトースター発表と同時に「アラジン グラファイトグリル&トースター」の新モデルも発表している(発売は21年4月)。

グラファイト ポップアップトースターと同時に発表し、21年4月に発売された「グラファイト グリル&トースター(フラッグシップモデル) CAT-GP14A」(直販価格3万9000円)

グラファイトグリル&トースターの新モデルは新たに自動メニューを搭載しただけでなく、付属の容器を用いることで炊飯やグリル、煮込み、蒸しなどさまざまな調理ができる万能家電に仕上がっている。パナソニックが1999年から20年以上モデルを変えながら販売し続ける「コンパクトオーブン」も、21年2月にオーブンレンジと同じ「ビストロ」ブランドを掲げた「ビストロ NT-D700」(実勢価格2万9700円)を発売しており、今後は「自動メニュー」が高級トースターの新トレンドとして定着しそうな勢いだ。

そうした中で、あえてパンしか焼けないポップアップトースターを発売したのには理由がある。「海外展開を見据えて開発した」(高橋氏)ためだ。

「海外ではポップアップトースターが主流なので、おいしいアラジンのトースターをもっと世界に広げるために、7月5日の日本発売を皮切りに、台湾、米国へと展開したいと思っている」(高橋氏)

千石は1953年にプレス加工業からスタートし、大手メーカーからの製造委託による家電製造事業、さらには特許技術である遠赤グラファイトを用いた暖房機メーカーとして成長してきた。電気ストーブは冬以外に売れないことから、ヒーター技術を用いたグラファイトグリル&トースターにたどり着き、「これまでに累計120万台を売り上げ、たくさんのお客様に大変ご好評をいただいている」(千石専務)という。

日本の狭い住宅では、パンしか焼けない大きめのポップアップトースターがどこまで伸びるのかは未知数だが、直販サイトでは一時品切れを起こすほどの人気だった。

千石の直販サイト「Aladdin Direct Shop」では品切れが続くほどの人気だった(画像は21年8月26日時点)

グラファイトグリル&トースターとの“二枚看板”で攻めることで、さらに活路が開けそうだ。また海外でどれだけ受け入れられるのか。グローバル市場を見据えたラインアップ拡充なども含め、今後の展開がかなり楽しみだ。

(文・写真 IT・家電ジャーナリスト 安蔵靖志)

[日経クロストレンド 2021年9月6日の記事を再構成]

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