変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

行動経済学の浸透により、ビジネスにおいても意思決定をゆがめる「認知バイアス」の存在が意識されるようになってきている。フランスのビジネススクールHEC経営大学院教授のオリヴィエ・シボニー氏は『賢い人がなぜ決断を誤るのか?』(日経BP)で、そうしたバイアスが経営上の意思決定に与える影響と対処法をまとめた。この本をもとに、企業の予算編成を題材に、バイアスが正しい判断をどのようにゆがめていくのかを見ていこう。

◇   ◇   ◇

行動経済学の発展によって、「人の意思決定は必ずしも合理的ではなく、必ずしも最適な選択肢を選ばない」ことが明らかになっている。その際、ランダムに意思決定を間違えるのではなく一定のパターンがあることもわかっており、そこに「認知バイアス(先入観や過去の経験などに基づく思い込み)」が深く関与している。自分の考えに肯定的な情報だけに耳を傾け、それ以外を無視しようとする──。これは「確証バイアス」と呼ばれるもので、意思決定を誤った方向へ誘導する。

こうした意思決定のゆがみは、当然、ビジネスの現場でも頻繁に見られる。例えば、9月であれば、来年度の予算計画について議論している企業も多いだろう。そこにはどんな「バイアスによるゆがみ」が生じやすいのだろうか。

 大企業で戦略計画や予算の策定に関わった人ならよくわかると思うが、このプロセスには多くの時間とエネルギーが必要だ。しかし、企業は毎年、こうしたプロセスをフルにこなして経営資源を配分しているのかと言えば、そうではない。ほとんどの企業は、延々と続く予算会議に数週間を費やしたあと、環境が変化しているにもかかわらず、前年と大差ない配分に落ち着く。
 複数の事業分野を持つ企業の資源配分に関するマッキンゼーの調査は、この驚くべき結論を裏づける。マッキンゼーのコンサルタントたちは、様々な業種の米国企業1600社の年次報告書を15年にわたって調べた。目的は、各事業分野への資源配分を毎年どのくらい変えるかを調べることだった。結果は、「企業の資本的支出に占めるパーセンテージで測った場合、ある年にある事業分野が受け取る金額は、前年に受け取った金額からほぼ正確に予測できる」というものだ。この二つの数字の相関は92パーセントだった。調査対象企業の3分の1では99パーセントに達した。
(第5章『なぜ波風を立てるのか?』104ページ)

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック