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「タニタがゲーム!?」 話題の陰に個人事業主化あり

タニタ 谷田千里社長(下)

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NIKKEI STYLE

健康機器大手のタニタ(東京・板橋)は、「働かされている感」から社員を解放するために、社員が個人事業主(フリーランス)になるという制度を2017年に導入した。前回の「タニタ『個人事業主化』 当初8人、5年目で31人に」に続いて、働き方改革に詳しい相模女子大学大学院特任教授の白河桃子さんが、会社としてのメリットや現状などについて、谷田千里社長に聞いた(以下、2人の敬称略)。

1年ごとに3年先まで再契約

白河 個人事業主の制度に対して、例えば50歳以上の層の反応はいかがでしょうか。21年4月施行の改正高年齢者雇用安定法により、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務になりましたが、現実的には企業も抱えきれないので、転職や独立にも対応できる力を鍛える支援が必要だといわれています。でも実際にはその機会に呼応しようとするシニア社員は少数派なのではないかと私は見ているのです。

谷田 そうですね。やはりこの制度に積極的なのは、若手が中心になっています。

白河 制度を本人が使わないまでも、シニア社員への影響は何かありますか。独立する社員を見ながら「自分のキャリアを会社任せにしないで、もっと頑張ろう」という雰囲気が生まれたとかは。

谷田 正直に申し上げると、(シニア社員らには)お尻に火がつかないという印象はあります。役職に就いている人がわざわざそれを捨ててまで(個人事業主になろう)とはなかなか考えないようです。

白河 個人事業主のメンバーとの業務委託契約は3年単位が原則ということですが、「3年たった後に仕事がなくなったらどうしよう?」という不安の声はありませんか。

谷田 3年単位といっても、1年ごとに業績を見て3年先まで再契約していく仕組みですので、実質的にはずっと3年契約が続いていきます。その意味ではかなり安定しているほうではないでしょうか。社員であってもメンバーであっても、会社が支払う総コストにそれほど違いはありません。

既存の組織に縛られない新しい仕事もできる

白河 制度導入から5年目を迎え、会社としてどんなメリットがありましたか。

谷田 大きなメリットは、社員の立場だとなかなかできないチャレンジから生まれるプロジェクトがいくつか実現したことです。例えば、セガゲームスさんとのコラボレーション企画として、「ツインスティック」(※)を開発するというプロジェクトが挙げられます。クラウドファンディングを立ち上げて、「なぜ(健康機器の)タニタがゲームを?」と話題にもなりました。

(※)プレイステーション4用ゲームソフト「電脳戦機バーチャロン」シリーズに対応した操縦かん型のコントローラー

これは私の発案で始まったプロジェクトでしたが、個人事業主のメンバーに「(その案件を)担当してほしい」と依頼できたのです。この制度がなかったら、「これは営業の仕事? 広報の仕事?」となって、担当先が定まらないまま実現しなかった可能性があります。

白河 なるほど。組織の枠組みの中では当てはめにくい新しい仕事でも、「これは○○さんに頼んだ仕事だから」と周囲を説得しやすくなったということですね。その方たちも部署横断的に動くことができる。

谷田 そうです。これは大きなメリットでした。まだ公表できないのですが、他にもキラキラしたプロジェクトが複数進んでいて、個人事業主のメンバーが引っ張っているものもあります。

組織に多様性が生まれる

白河 やはり交ざり合うことが大事なのでしょうか。

谷田 外に目が向いている人と交ざり合うことで組織が活性化されるんだなぁと実感しています。それも、もともと同じ社員だった仲間が「外向き」の視点を持って交じり合うというのがいいです。社外のコンサルタントを呼んでも、いなくなったら「台風が去ったね」と元に戻るので、全然違います。

白河 社外コンサルではなく、社外との関係性を持っている人材が個人事業主のメンバーということで、いい関係が生まれていますね。そのメンバーと共同プロジェクトを立ち上げることで、相乗効果がある。つまり組織内に多様性が生まれるのですね。

谷田 はい。拒否反応が生まれにくい多様性施策だと思います。ゲーム『刀剣乱舞』とコラボレーションした歩数計も、この制度がきっかけで生まれたものです。当初は「1000台売れたらいいよね」と言っていたのに、蓋を開けてみれば数倍以上のヒットになりました。

セガゲームスさんとの企画が成功体験となって、アニメやゲームからアプローチして健康を支援するという発想が社内でポジティブに受け入れられるようになり、どんどんチャレンジする領域が広がっていったのは良かったですね。eスポーツ大会も主催しています。タニタという会社がeスポーツ大会を開くなんて、5年前には想像もしていませんでした。とても大きな学びがありました。

個人事業主になっても社内での関係性は変わらず

白河 確実な実績が出てくると、社員の皆さんもこの制度の意義をより深く理解しますよね。ちなみに、同じプロジェクトをやる社員の人と個人事業主のメンバーとの間で、意識の乖離(かいり)は出てこないものでしょうか。

谷田 元は同じ社員だったので、それほど関係性は変わらず、「早く帰れと言われないくらい」だそうです(笑)。

白河 なるほど。「雇用形態が変わったんだってね」くらいの感覚なのですね。個人事業主になったことで年収が上がった人もいるのでしょうか。

谷田 うまくいっている人はかなり上がっています。高級車をリースしているのを見て「いいなぁ」という声もあります。それを羨ましいと思うなら、「ぜひあなたもやってみてください」という感じです(笑)。

白河 社員と自由な裁量で仕事ができる個人事業主のいいとこ取りができているのですね。この制度を使う社員がもっと増えてほしいと思いますか。

谷田 はい、そう思いますね。

テレワークの影響はなかった

白河 新型コロナウイルスによる影響はありましたか。コロナによってテレワークが浸透して働く時間と場所の自由度が高まった結果、「フリーランスにならなくても、今までより自分の裁量で働けるようになるかも」と考えている人は大勢います。御社では応募者数への影響はありましたか。

谷田 私もそう考えたのですが、実際には、21年1月時点の応募者は前年より増えていました。

白河 社員の再雇用についてはどうお考えですか。最近は、一度退職した社員の再入社を歓迎する風潮で、OB・OGとつながる「アルムナイ」活動に積極的な企業も増えていますが。

谷田 私個人としては消極的です。外の世界を経験した知見を生かしてもらえるというメリットがあるのは重々承知していますが、「またいつか見限られるんだろうな」というリスクをどうしても感じてしまうのです。私は人間関係を非常に重視するので、長く付き合いを重ねてきた社員を高く評価したいという考えがあります。「外の世界」で得られる知見を持つ人材との接点は、個人事業主制度によって獲得できているので、再雇用を奨励する理由が見当たらないのですよね。

白河 日本の働き方は長らくメンバーシップ型でした。労働市場の流動性を高めるにはジョブ型への移行が不可欠ともいわれています。個々の社員は担当する業務内容を明確にして、その業務に対して責任を持って仕事をし、会社は対価を支払うという対等な関係性をつくるという働き方ですね。御社でも、ジョブ型へと移行していく動きはあるのでしょうか。

谷田 当社の場合は、全社員の働き方を抜本から変えるのには、組合の同意が必要なこともあり、時間がかかると思われます。

白河 だから、就業規則を変えるのではなく、自由選択できる制度として個人事業主の仕組みを導入したのですね。

谷田 ただ、私が米国で働いていた経験を生かして、ジョブディスクリプション(職務記述書)を作成させています。職務内容や部署の役割をきちんと書き出して、毎年更新していくという仕組みは取り入れています。

白河 社内のジョブを明確化して、さらに個人事業主の制度も始まって……という流れの中で、社員の方々は会社の変革を感じているのでしょうね。

谷田 きっとそうだと思います。

白河 本日は新しい制度を導入した企業ならではのリアルなお話が大変参考になりました。これからも御社の取り組みに注目していきます。

あとがき:「社員の個人事業主(フリーランス)化」という新しい働き方にシフトしたタニタ。導入時は大変話題になったのですが、実際にどんな変化や成果が生まれたのか、ずっと気になっていました。ミドルシニア層の早期退職とセットの個人事業主化ではなく、若い人たちが率先して使える制度設計がいいですね。今までになかった業界とのコラボを担う人材として、個人事業主のメンバーが活躍している様子などがうかがえました。社内の風土を変えたいという経営者の思いはさまざまな施策として導入されますが、これはユニークです。

白河桃子
相模女子大学大学院特任教授、昭和女子大学客員教授。東京生まれ、慶応義塾大学文学部卒業。商社、証券会社勤務などを経て2000年ごろから執筆生活に入る。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員、内閣府男女共同局「男女共同参画会議 重点方針専門調査会」委員などを務める。著書に「働かないおじさんが御社をダメにする ミドル人材活躍のための処方箋」(PHP新書)、「ハラスメントの境界線」(中公新書ラクレ)など。

(文:宮本恵理子)

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