サメの遊び場
サメがなぜ仲間づきあいをするのか、どの程度協力しあうのかを解明するのはまだ困難だが、餌の入手状況や気候変動による海洋の温暖化など、いくつかの手がかりがある。
米カリフォルニア州では、1994年にホホジロザメを保護するようになってから個体数が回復し、南部の沿岸では記録的な数のホホジロザメ(主に幼魚)が確認されている。
カリフォルニア州立大学ロングビーチ校サメ研究所のクリス・ロウ所長のチームは、ドローンを「スパイ衛星」として利用し、送信機を取り付けたサメを追跡した結果、20年にサンディエゴからサンタバーバラにかけての沿岸で53匹のサメを確認した。
ロウ氏によると、ホホジロザメは通常9メートルほどの距離を保っていて、あまり仲良しには見えないが、彼らが気に入った海域に集まっているという。
「人間の子の遊び場や校庭のようなものだと思います。餌を食べているサメも、ただぶらついているサメも、いじめられないように逃げ回っているサメもいます」とロウ氏は言う。「問題は、サメの子たちがなぜこの遊び場にやってくるのか、何が彼らを引きつけるのかということです」
研究者たちは、いくつかの仮説を立てている。この海域にはサメの好物であるアカエイが多いこと。海岸付近にいることで、大型のサメなどの捕食者から身を守ることができること。そして、気候変動による太平洋の海水温の上昇に伴い、ホホジロザメがどんどん北上していることだ。
バハマのビミニ諸島にあるビミニ・サメ研究所のマット・スムコール所長によると、サメが協力して狩りをするかどうかを解き明かすのは難しいという。例えば、オオメジロザメやツマグロ(メジロザメ目のサメ)など一部のサメは、餌となる魚たちが集団で一斉に産卵するときには数十匹も集まってきて、獲物を取り囲んでいるように見えることがある。

スムコール氏は、「問題は、サメたちが本当に協力しあっているのか、つまり、狩りの条件を最適化するために意図的にそれをやっているのかということです」と言う。「たまたま大量の餌があり、それぞれのサメが食事をしに来ただけかもしれません」
どちらにしてもサメにとっては利益になる。「1匹のサメにとって良いことは、ほかのサメにとっても良いことであり、みんなが餌にありつけます」
パパスタマティウ氏は、有利な水流もサメが集まる理由になるかもしれないと言う。
