起用時は批判も多かったクレイグだが

『ダイ・アナザー・デイ』では49歳だったブロスナンだが、クレイグは38歳とグッと若返った。『カジノ・ロワイヤル』の公開前、クレイグは初の“金髪”ボンドだったため否定的な意見が数多くあった。またブロスナンがボンド役に起用される前、テレビシリーズ『探偵レミントン・スティール』で既に有名だったのに対し、クレイグは『トゥームレイダー』『ロード・トゥ・パーディション』などハリウッドメジャー映画への出演はあったものの、知名度が低かったことも「ボンド役が務まるのか」という懐疑的な意見に拍車をかけた。

だがふたを開けてみれば、粗削りながら傷つきやすさを秘めたボンドが好評を博する。身体能力を生かした生身のスピーディー&リアルなアクションも高く評価され、シリーズの人気が再び上向いた。『ダイ・アナザー・デイ』の世界興行収入は4億3200万ドルだったものの、21作目『カジノ・ロワイヤル』が5億9900万ドル、22作目『慰めの報酬』が5億8600万ドル、そして23作目『スカイフォール』がシリーズ最高の11億900万ドル、24作目『スペクター』が8億8100万ドル。クレイグ版ボンドは世界的に受け入れられたことが分かる。12年のロンドン・オリンピックの開会式では、エリザベス2世を会場にエスコートするボンド役として登場したことも、世界的な人気の証明となった。

ちなみに日本での興行収入を見ると、『ダイ・アナザー・デイ』23.5億円、『カジノ・ロワイヤル』22.1億円、『慰めの報酬』19.8億円、『スカイフォール』27.5億円、『スペクター』29.6億円と、クレイグ版ボンドでは『スペクター』が最も高くなっている。

クレイグ版ボンドが他と違う点に、出演した5作がつながった物語になっていることがあげられる。後編では、そのつながりを解説する。

『 007/ノー・タイム・トゥ・ダイ 』
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ボンドは所属していた英国諜報組織MI6を5年前に退き、ジャマイカで穏やかに暮らしていた。彼の元にCIA出身の旧友フィリックス・ライターが助けを求めてやってくる。任務は誘拐された科学者を救出すること。やがて彼は人類に脅威をもたらす最新技術を保有する黒幕を追う。10月1日(金)公開 東宝東和配給 

(ライター 相良智弘)