すっかり身近になった動画配信サービスだが、あえて作品数を絞るモデルも増えている。その狙いは何か。3つのサービスの運営者に話を聞いた。最初に取り上げるのはミニシアターのBunkamuraル・シネマ(東京・渋谷)が配信するオンライン映画館「APARTMENT(アパートメント)」だ。

オンラインでミニシアター気分が楽しめるサービス「APARTMENT by Bunkamura LE CINEMA」は、8月に開設されたばかりのオンライン映画館だ。東京・渋谷で30年以上にわたって、世界中の映画を紹介し、ミニシアターブームをけん引してきたBunkamura ル・シネマが手掛ける。独自に権利を取得した、他では見られない良質なミニシアター作品をどこでも好きな場所でオンラインで楽しむことができる。月額料金を支払うサブスクリプションモデルではなく、映画1本ずつに料金を支払うシステムというところがポイントだ。
オープニング作品は、2021年英国アカデミー賞で『ノマドランド』の7部門を上回る最多8部門でノミネートされ、「最もパワフルなシスターフッド映画」と評されるサラ・ガヴロン監督の『Rocks/ロックス』(「シスターフッド」は女性同士の連帯や絆を意味する)。そして『恋人たちの予感』や『ブリジット・ジョーンズの日記』など数々のロマンチックコメディーの名場面を引用し「ロマコメ映画とは? 愛とは?」について探求するフィルムエッセー『Romantic Comedy/ロマンティック・コメディ』の2作品。映画の配信・視聴は、動画プラットフォームのVimeoを通して行い、オープニング2作品の鑑賞価格はそれぞれ1200円。決済完了後48時間以内であれば、繰り返し視聴可能だ(11月中旬まで配信予定)。

ミニシアターブームをけん引してきた映画館が、配信サービスをスタートした理由は何か。オンライン映画館「APARTMENT」を手掛ける、東急文化村美術・映像事業部シネマ運営室の浅倉奏氏にその経緯などを聞いた。