日経エンタテインメント!

映画館の代替・つなぎのサービスではなく

――「APARTMENT」のスタートに当たって、その経緯、目的などを教えてください。

もともと1年以上前、日本でも新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)以降、劇場が休業を余儀なくされる状況になるなかで、海外の映画祭がヴァーチャル開催になる、あるいはアメリカの人気映画制作スタジオのA24作品などのミニシアター規模の映画興行がヴァーチャルでの可能性を模索していた動きに刺激を受け、考えたものです(A24は『ルーム』『ムーンライト』『レディ・バード』など、アカデミー賞受賞作も含め、次々と話題作を制作しているスタジオ)。

ただ、「パンデミックだから実際の劇場の代替・つなぎとしてのバーチャルで」とするのではなく、せっかくやるのであれば将来につながるような、オルタナティブな可能性を見出したい、これまでの劇場運営や映画興行のあり方とは異なるチャレンジをしたいという意図で立ち上げました。

―― ターゲットにしているのは?

オンライン/ヴァーチャルのため、ターゲットとしてはデジタルネーティブである(1990年代後半~2000年代前半に生まれた)「Z世代」から、(1981~1996年までに生まれた)「ミレニアル世代」の映画ファンが中心になるかと思います。

――定額制の動画配信サイトも増えていますが、オンライン映画館ということで作品ごとに販売するスタイルにしたのは?

映画館は作品と観客をつなぐ媒介であり、ひとつひとつの映画を丁寧に届けるという上映者としてのスタンスはヴァーチャルになっても変えたくありませんでした。「通常の映画興行の、上映場所がル・シネマの劇場からオンラインになった」というシンプルなデザインで考えたためです。

――モデルにされたサービスはありますか?

早期からロックダウン(都市封鎖)がなされた海外での映画祭の動きや、個人的に過去に旅行で訪れた海外の映画館の様子を日々インスタグラムで追っているうちに考え始めました。それぞれ当然、「映画は映画館で」「劇場を守りたい」など様々な考えや葛藤があったはずですが、たとえばニューヨークのメトログラフという映画館のプログラム担当が「劇場ももちろん守るし、オンラインでさらに多くのお客様に、自分たちが情熱を傾ける映画を届けられるのもうれしい」と前向きに語っているのを目にし、このような状況だからこそ、将来につながるチャレンジをする姿勢に刺激を受けました。

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今の自分と社会を接続してくれる作品を