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松下洸平 歌詞の世界と自分をリンクさせるのが難しい松下洸平インタビュー(上)

2021/9/16

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日経エンタテインメント!

朝の連続テレビ小説『スカーレット』(2019年度後期放送)で、戸田恵梨香が演じる主人公・喜美子のパートナー・八郎を誠実に演じ切り、一躍注目を集めた松下洸平。内からにじみ出る静かな存在感を示すことができたのは、長年舞台の上で磨いてきた確かな演技力の賜物だろう。

1987年3月6日生まれ、東京都出身。歌手デビュー後、ミュージカルや舞台演劇で頭角を現す。最近の出演作は、ドラマ『#リモラブ~普通の恋は邪道~』、舞台『カメレオンズ・リップ』など多数。この秋には、映画『燃えよ剣』で新選組の斎藤一を演じる(写真:藤本和史)

09年にブロードウェイミュージカル『GLORY DAYS』で初舞台を踏んで以来、八郎そのままの生真面目さで俳優業に打ち込んできた。18年、舞台『母と暮せば』で文化庁芸術祭・演劇部門新人賞。同作とミュージカル『スリル・ミー』で第26回読売演劇大賞の優秀男優賞と杉村春子賞を同時受賞。その演技力は折り紙付きだ。

最近は、バラエティにも進出。今年1月から『ぐるぐるナインティナイン』(日本テレビ系)の人気コーナー『ゴチになります!』にレギュラーとして参戦。ちゃめっ気たっぷりで親しみやすい一面を見せている。もともと画家を目指していただけあって画才もあり、雑誌『ダ・ヴィンチ』ではイラストとエッセーを連載。なんとも多才な人物だ。

そんな全方位でパーフェクトな活躍を見せる彼に、音楽家の顔が加わる。これまでも楽曲制作やライブなどを地道に続けてきたが、8月25日に『つよがり』でシンガーソングライター・松下洸平としてメジャーデビューした。表題曲は、松尾潔がプロデュースと作詞を手掛けた、愛しながらも宿命にあらがえない男が心の中で泣くように切なく歌うラブソングだ。

34歳になった今だから歌える歌

「松尾さんが手掛けたCHEMISTRYやEXILE、JUJUさんなどの曲を聴いて泣かされた世代なので、書いていただけると分かったときはうれしかったですね。ただ、誰かが書いた詞を歌ってレコーディングした経験がなく、曲を最初にいただいたときは歌詞の世界と自分をリンクさせるのがすごく難しいなと感じました。

ヒントになったのは、松尾さんが『今の松下洸平にしか歌えない曲を作った』』と言ってくださったこと。34歳という年齢や、このキャリアだから歌える歌なんだと思うと、余計な肩の力が抜けて等身大で歌える気がしてきたんです。松尾さんの作る大人な世界観や、いい意味での未練がましさが色気になっていると感じたので、今の僕が歌うことで出るセクシーさが表現できればと思いながらレコーディングしました。

松尾さんのディレクションは、うまく歌うためというより、感情にフォーカスしたものが多かったように感じました。ストーリーがしっかり見えるように、1番は少し抑えて歌い、感情のマックスはDメロのラスト『あなたのこと/愛する資格はない』という歌詞に持ってきてはどうだろう、などと起承転結をしっかりと作るイメージを共有していただいて。

『つよがり』というワードの歌い方1つをとっても、どう歌うのが1番ぐっとくるか、レコーディングしながら絶妙なラインを探っていきました。言葉通りに強く歌いすぎると『かえって感情が見えにくくなるかもしれないね』とアドバイスをいただいたり。逆に抑え目に歌ったときは『強がってるね。いいよ、いいよ。泣けるよ』と褒めていただきました(笑)」

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