2021/9/27

無症状感染が心臓に害を及ぼしている可能性を示唆する研究もある。米オハイオ州立大学の心血管疾患専門医サウラブ・ラジパル氏らが、新型コロナ検査で陽性と判定された大学スポーツ選手1600人に心臓MRI(磁気共鳴画像装置)検査を実施したところ、37人に心筋炎の証拠が見つかり、そのうちの28人は無症状だった。論文は21年5月27日付で医学誌「JAMA Cardiology」に発表された。

心筋炎は、胸痛、動悸(どうき)、失神などを引き起こすことがあるが、それらの症状が全く出ない場合もある。ラジパル氏によると、研究に参加したスポーツ選手たちは無症状だったが、「MRI上の変化は、症状のある心筋炎を患っている人と同程度」であったという。

ラジパル氏は、これらの画像が、無症状患者の健康にとって最終的にどのような意味を持つのかはまだわからないと言う。心筋炎が時間の経過とともに(もしかすると本人が病気に気づかないうちに)治癒する可能性もあれば、より深刻で長期的な健康問題に発展する可能性もある。それを明らかにするには、長期的な研究が必要だ。

なお、参加したスポーツ選手の心筋炎は新型コロナの感染とは無関係だった可能性もあるが、それを判断するには、感染する直前に撮影されたスキャン画像と比較する必要がある。

長期にわたる後遺症も

感染時には無症状だった人が、長期の後遺症に悩まされるリスクもある。ロングコービッドは、体の痛み、呼吸困難、倦怠(けんたい)感、ブレインフォグ、めまい、睡眠障害、高血圧などの多様な症状の組み合わせからなる症候群で、明確に定義するのは難しい。

「(後遺症に)なるのは重症者だけ、という俗説もありますが、軽症者のほうがはるかに頻繁に発症します」とトポル氏は言う。

米スタンフォード大学病院の新型コロナ急性期後症候群クリニックの共同所長、リンダ・ゲン氏も同意見だ。「急性期の重症度から後遺症になるかどうかを予測することはできません。そして、後遺症になった人は著しく衰弱することがあり、そうした人々が最終的にどうなるかはまだわかっていません」

後遺症のある人の中で感染時に無症状だった人がどのくらいの割合を占めているかを評価しようとする研究も行われている。米国の医療系非営利団体フェアヘルス(FAIR Health)は、医療費請求の分析から、無症状だった感染者の約2割が後遺症になったと主張している。査読前の論文を投稿する「medRxiv」に21年5月5日付で発表された別の研究論文では、米カリフォルニア大学の電子カルテのデータを用いて評価し、その割合を32%と推定している。

後者の論文の共著者で、米カリフォルニア大学アーバイン校看護学部のメリッサ・ピント准教授は、新型コロナの後遺症に明るくない医師に症状を否定されて治療をためらう患者もいることから、後遺症患者における無症状感染者の割合は過小評価されていると考えている。

パーカー氏は、医師たちは後遺症の幅広い症状をまだ理解しようとしている最中だと打ち明ける。「私たちのところに来た患者さんには徹底的に検査を行います。なぜなら、どの症状が新型コロナのせいで、どの症状が基礎疾患のせいなのか、正確にはまだわからないからです。いちばん避けたいのは、患者さんに『この症状はコロナのせいですよ』と言った結果、対処できたはずのほかの疾患を見逃してしまうことです」

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小児におけるまれな炎症