2021/9/27

小児におけるまれな炎症

最初の感染から数週間後の小児に発症する、川崎病に似た謎の炎症症候群も、パンデミックの初期から報告された。

このまれな疾患は現在、「小児多系統炎症性症候群(MIS-C)」と呼ばれている。典型的には発熱、発疹、腹痛、嘔吐(おうと)、下痢などの症状があり、心臓の機能障害から肺の損傷まで、複数の臓器に悪影響を及ぶことがある。14歳未満の子どもに多く見られるが、大人でも診断されることがある。

米コロンビア大学バジェロス内科医・外科医カレッジの小児科助教カンワル・ファルーキ氏によると、小児の新型コロナ患者のうち重症化するのは1%未満であり、MIS-Cの患者はその中のごく一部であるという。つまり、MIS-Cは極めてまれな疾患だ。それでも、新型コロナの無症状感染がMIS-Cに関係しているのは事実であり、最近の研究では、MIS-Cと診断された1075人の子どもの4分の3が、最初は無症状だったとされている。

しかしMIS-Cは、新型コロナでの症状の有無にかかわらず、長期的な影響を残さないと期待できる理由がある。最近の研究でファルーキ氏は、45人の小児患者について、心臓弁膜症や冠動脈肥大などの異常のほとんどが6カ月以内に解消したと報告している。

「心強い結果です」とファルーキ氏は喜びながらも、心臓の問題が解消したと思われる患者に対しても、長期的な損傷などがないかどうかを確認するために、MRIによるフォローアップ検査を行うことを推奨している。また、子どもの無症状感染に注意を払うことは「極めて合理的」だと述べ、感染初期に軽症だったり無症状だったりしても、症状が続くようであれば医師に相談することを勧めている。

さらなる研究の必要性

科学者たちは、無症状感染の潜在的な危険性についてはまだ多くのことがわかっていないと注意を促している。多くの研究者は、無症状感染の長期的な影響や、そのような影響が生じる理由、後遺症の治療法を明らかにするためには、より綿密な研究が必要だと指摘する。

ラジパル氏は自身の研究について、米大学スポーツの協議連盟「ビッグ・テン・カンファレンス」が選手に数日ごとの検査を義務付けていることで初めて可能になったと言う。定期的な検査は無症状感染者を発見する鍵となるので、新型コロナの無症状感染に関するデータの多くは、医療従事者やスポーツ選手など、厳しい検査が定められている職場で得られる可能性が高い。

新型コロナ後遺症の原因はまだ不明だ。一部の科学者たちは、感染症が治癒した後も、免疫系の炎症反応が持続するためではないかと考えている。あるいは、感染がピークを過ぎてから数カ月たっても、体内に残っているウイルスの残骸が免疫反応を持続的に引き起こしているのではないかと考える科学者もいる。

無症状感染が高い死亡率や入院率に結びつかないとしても、後遺症が長引くと患者の生活の質が低下することを忘れてはならないとピント氏らはくぎを刺す。

何よりも重要なこと

無症状感染の長期的な影響については不明な点が多いため、慎重に判断したほうがよいと科学者たちは主張する。

「影響がすべて現れるには何年もかかるのかもしれません」とラジパル氏は言う。無症状感染が本当に悪い結果をもたらす可能性は低いが、感染率が高いほど、苦しむ人は増える。「公衆衛生の観点から言えば、この感染症にかかる人が減れば、深刻な結果になる人は減ります」

パーカー氏も同意見だ。その上で、感染力の強いデルタ株のせいで米国内の感染者や入院患者が急増している今、感染を予防することが何よりも重要だと主張する。新型コロナへの無症状感染が健康に及ぼす影響はまだ不明だが、「ワクチンが安全で有効であることはわかっています」

(文 AMY MCKEEVER、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年9月4日付]