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コロナ予防にウレタンマスクはNG 医師も不織布を推奨

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日経メディカル

新型コロナ感染症はデルタ株のまん延で感染が拡大しており、このままでは以前のような生活が戻ってくる見通しが立っていない。ここでは、過去11年で3万人以上の初診患者を診察した大阪・梅田の開業医・谷口恭医師が、収まらない感染拡大についてどうしても伝えたいことを語ってくれた。

◇   ◇   ◇

相次ぐ百貨店での新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)集団感染を受け、国立感染症研究所は「百貨店・ショッピングセンター等大型商業施設の事業者、従業員、及び産業保健スタッフの皆さまへの提案(2021年8月12日時点)」を公表した[注1]

僕のような単なるGP(General Practitioner 総合診療医)が、同研究所のような権威ある組織に対し、なんのエビデンスも用意せずに申し入れをすることが非常識なのは承知しているが、この同所の「提案」には、百貨店での集団感染発生に際し僕が最も問題だと思っていることが含まれていないために、この場を借りて述べておきたい。

7月下旬、大阪梅田にある阪神百貨店で地下の食品売り場を中心にクラスターが発生した。そのすぐ近くにある阪急百貨店でも7月27日以降、従業員34人の感染が判明した。これらに対し、国立感染症研究所は「客が密となる場所においては人の流れや(時間当たりの)入場者数の調整をする。その際、売り場では、例えば混雑時・非混雑時のCO2濃度を参考に換気を工夫する」という提案をしている。

だが、これでは不十分なのだ。先に「なんのエビデンスも用意せずに」と述べたが、どうしても言っておきたいのは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行以降、僕自身が両百貨店に何十回と足を運んでおり実態を観察しているからだ。というのも、阪神、阪急どちらの百貨店も当院から徒歩10分程度の距離に位置しており、百貨店そのものに用があることはそう多くないのだが、入り口の前を通り過ぎることは月に何度もあるのだ。

両百貨店の入り口を観察していつも驚かされるのが「マスクのチェックがされていない」ということだ。もちろん、マスクをせずに入店する客はおらず(もしいれば入り口の係員に制止されるだろう)、全ての客にアルコールによる手指消毒が義務付けられており(これを無視して入店するのは容易ではない)、体温測定もされている。ただ、マスクはどのようなマスクでも通過できるのだ。実際、僕の印象で言えば、入店者の2~3割はポリウレタンマスクや布マスクしかしていない。一度、ネックゲートルでの入店が認められるかどうかを調べようと思い、僕が被験者になって入店を試みると何のとがめもなく入れてしまった……。

[注1]百貨店・ショッピングセンター等大型商業施設の事業者、従業員、及び産業保健スタッフの皆さまへの提案(https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/10579-covid19-18.html)

院内で不織布マスクの着用を義務付けた

2020年春、マスクが絶対的に不足していた頃、僕は患者に布マスクを勧めていた。CDCのサイトには古いTシャツやバンダナ、あるいはコーヒーフィルターを使ってオリジナルマスクを作る方法が紹介されていたので、そのページを診察室で患者に示していたこともある(なお、CDCのこのサイトは現在は閲覧できなくなっているが、英国紙The GuardianがこのCDCのサイトを紹介した記事は残っている[注2])。

当時は布マスクでも十分な効果があると言われていたし、この事実が変ったわけではない。だが、布マスクは重ね折りして初めて有効になる。例えば、バンダナなら半分に折ってさらに3つに折る、つまり六重折りが必要となる。重ね折りしていない布マスクやポリウレタンマスクでCOVID-19の予防ができるわけではない。

では、実際のマスクの効果はどの程度のものなのだろうか。まずは、香港大の研究[注3]を振り返っておきたい。この研究では、サージカルマスク着用時に、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、ライノウイルスのそれぞれがどれだけ呼気に漏れるかが調べられている。ライノとインフルエンザはある程度マスクを通り抜けるのに対し、コロナウイルスの場合は、驚くべきことに、droplet(直径5μm以上)のみならず、aerosol(直径5μm以下)にもウイルスは検出されなかったのだ。

2020年春の時点では、まだマスクの効果を疑う声が少なくなかった。ウイルスの大きさを考えると、N95でさえ不十分なのにサージカルマスク(不織布マスク)などで防げるはずがないという意見がそれなりにあったのだ(実は、僕自身もCOVID-19が流行しだした2020年の2月には診察室でさえマスクを着用していなかった)。この研究の登場で、サージカルマスクを適切に着用していれば他人に感染させる可能性が極めて低いことが分かったわけで、この論文は非常に価値があると思っている。

次に我々が必要な知識は「マスクの種類でどれくらいの差が出るか」だが、これが大きく報道され出したのは、今年頭くらいだろうか。2021年2月3日、東洋経済ONLINEが国立病院機構仙台医療センターの西村秀一先生の研究を取り上げ公開するなどにより、マスクの効果の違いが徐々に市民にも知られるようになったと思う。

ここで紹介されているグラフを見れば一目瞭然だ。0.3~0.5μmの粒子を各マスクがどれくらい除去できるかが示されており、N95とサージカルマスクであれば9割以上が除去できるのに対し、布マスクは2割未満、ポリウレタンにいたってはほとんどゼロだ。

とはいえ、当院にもポリウレタンマスクのみで堂々とやってくる患者が少なくない。布マスクと合わせると全体の2~3割といったところで、僕の阪急・阪神両百貨店での"フィールドワーク"の結果と大差はない。行く先々でマスクを交換する人はそう多くないだろうから当然といえば当然だが。

[注2]How to make a non-medical coronavirus face mask - no sewing required(https://www.theguardian.com/us-news/2020/may/11/make-non-medical-coronavirus-face-mask-no-sewing-required)

[注3]Respiratory virus shedding in exhaled breath and efficacy of face masks(https://www.nature.com/articles/s41591-020-0843-2)

 当院では両百貨店とは異なり、ポリウレタンマスクや布マスクなど、サージカルマスク以外のマスクを着用している患者には、そのままでは受付ができないことを説明し、その場でサージカルマスクを1枚10円で買ってもらっている(そのお金は慈善団体に募金している)。苦情(クレーム)が来るかなと予想していたのだが、今のところ全員が当院の方針を理解してくれている。恐らくうまくいっている最大の理由は、西村先生のグラフがものすごく説得力があるからだろう。グラフをプリントしたもの(下図)を受付に掲示しているのだ。

図 太融寺町谷口医院内に掲示しているポスター

サージカルマスクの供給量は随分と回復していると聞く。「歴史にもしもはない」わけだが、それでも、「もしもポリウレタン製マスクでは予防できないことが周知され、屋内入場時にはサージカルマスクの着用がマナーとなり、百貨店の入り口で当院と同じ対策が実施されていたならば、集団感染は起こらなかったのではないだろうか」とまで想像してしまう。

ちなみに、当院の患者のCOVID-19の感染経路は、家庭内を除けば飲食店での感染が最も多く、外食をしていないという場合はほぼ全例がポリウレタンマスクを使用している(いた)ようだ。「発熱外来」の問診時には感染経路を尋ねる時間の余裕がなく、また患者のほとんどが最初は「感染するような所には行ってません」と言うために、それ以上は深追いせずに、報告書には「感染経路不明」と記載している。だが、後日患者が回復してから改めて尋ねると「外食しました」「外出時は(ポリ)ウレタンマスクでした」と答える者が非常に多い。

ワクチンの普及はある程度進んだところでブレーキがかかるだろうし、12歳未満への接種は開始されることになったとしても一筋縄ではいかないだろう。ならば、基本に戻って「適切なマスクの着用」をもっと社会に強調すべきではないだろうか。誰がその役割を担うべきなのか。もちろん我々医療従事者だ。当院ではこれからも、原則として「来院者全員のサージカルマスク着用義務」を続けるつもりだ。

[日経メディカル2021年9月1日付記事を再構成]※情報は掲載当時のものです。

谷口 恭さん
太融寺町谷口医院院長。1991年関西学院大学社会学部卒。商社勤務を経て、2002年大阪市立大学医学部卒。研修医終了後、タイのエイズ施設でのボランティアを経て大阪市立大学医学部総合診療センター所属となり、現在も同大非常勤講師。2007年に大阪・梅田に開業。日本プライマリ・ケア連合学会指導医。労働衛生コンサルタント。

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