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肥満増加の真犯人? ポテトチップをやめられないワケ

食品に仕掛けられた至福の罠(2)

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NIKKEI STYLE

 お菓子を食べはじめたら、途中でやめられなくなり、気づいたら一袋を一気に食べてしまった──。そうした経験は誰にでもあるだろう。実は、加工食品のグローバル企業は、消費者が自社の食品を買い続けるよう、さまざまな罠(トラップ)を製品に仕掛けているという。『ニューヨーク・タイムズ』紙記者のマイケル・モス氏は、近著『フードトラップ』で、長期的には健康をむしばむ可能性があることを承知で、消費者をひっかける製品を次々と世に送り出す加工食品業界の実態を暴いた。著書の舞台は米国だが、登場するのは世界を市場にしている企業ばかり。当然、日本も無関係ではいられない。2010年に食肉汚染報道でピュリッツアー賞した敏腕記者モス氏が、無防備に加工食品を利用する消費者に警鐘を鳴らす。

大手加工食品企業の実態を調べるために資料を集め、業界幹部のインタビューを重ねるにつれて、消費者が気を付けるべき多くのことが明らかになっていった。

たとえば、食品企業は、商品に健康的なイメージを持たせるために果物を利用している。果汁の濃縮液がほんのわずかでも加えてあれば、企業は合法的に「フルーツ」という単語をパッケージに躍らせることができる。しかし、果物をひたすら濃縮していくと、残るのはほぼ糖分だけになる。米国人がこの形で1年間に摂取する糖分量は、平均約32キログラムにも達する。

 濃縮果汁の製造方法はさまざまだが、大まかな工程は次のとおりだ。まず、果物の皮をむく。ここで食物繊維やビタミンの多くが失われる。次に果汁を抽出する。これで食物繊維がさらに失われる。苦味成分を除去する。品種混合によって甘味を調整する。最後に、水分を蒸発させる。極端な場合、こうして得られる最終産物は、業界で「裸の果汁」と呼ばれる。
 基本的にそれは、繊維質、味、香りなど、実際の果物からわれわれが連想するものがほとんど完全に取り除かれた、純粋な糖である。つまり、栄養的には砂糖や異性化糖よりなんら優れたところがない、別の種類の糖にすぎない。こうした濃縮果汁の価値は、果物の健康的なイメージを残しているところにある。(『フードトラップ』より抜粋)

乳製品に関しては、米国政府は酪農業界と手を組み、飽和脂肪酸をチーズという形態でわれわれの食事に押し込んだ。消費者サイドでは、飽和脂肪酸の摂取量を減らすために低脂肪乳を選ぶ人が増えていた。しかしその陰で、チーズが、食品から原材料へと姿を変えていった。

食料品店で気づいた人もいるだろう。かつてはブロックタイプとスライスタイプくらいしかなかったチーズの陳列棚に、今や細切りチーズ、キューブ状チーズ、裂けるチーズ、粉チーズなど、多種多様な商品が並んでいる。料理用として消費量を増やすのが目的だ。

乳製品売り場だけではない。食料品店のどこを見ても、チーズクラッカー、チーズ入り生地の冷凍ピザなど、チーズを前面にうたった商品が目に入る。これによって米国のチーズ消費量は1970年に比べて3倍に跳ね上がった。現在、一人当たりの年間消費量は平均15キログラムである。

幼児期の塩分摂取習慣が後の健康に影響する

さらに、食塩をめぐる攻防も見逃せない。1980年代前半、連邦政府が加工食品の塩分規制に乗り出そうとした。しかしスナックメーカーは、ナトリウム不足が妊婦に有害かもしれないとアピールしてこの動きを制した。

科学的研究から、塩分に関する新たな知見も得られている。

ヒトは生まれつき糖分と脂肪分を好むが、塩分は例外で、塩分に対する強い欲求がみられるようになるのは、生後6カ月以降だ。最近の研究によれば、幼児期に塩味の強い食べ物を与えられた子どもは、就学前に、加工食品の表面に付いている食塩を直接なめるようになる確率が高いという。

子どもが生まれつき塩味を好むわけではない。塩分の好みは教えられて獲得するものであり、教えられた塩分の好みはその人の食行動に深く根付く。

塩分は脳にどのような作用を及ぼすのだろうか。

2008年、これに関する特に興味深い研究結果が発表された。アイオワ大学の研究者らによる「塩分の渇望─病的ナトリウム摂取の精神生物学」というタイトルの論文である。平たく言えば、「体を壊すほど大量の塩分が欲しくなるのはなぜか」ということだ。彼らは、脳画像や、塩分に関連する過去の研究報告をつぶさに調べて、一つの結論に達した。生命活動に必要なもので、度を過ぎると問題になるものはさまざまあるが、塩分もその一つだというのである。論文は塩分のこの性質について「依存性を持つという点でセックス、自発的な運動、脂肪分、炭水化物、チョコレートと」同様だと指摘した。

2011年、権威ある医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』にある調査結果が掲載された。1986年から4年ごとのデータで、着実に人々の運動量が減り、テレビの視聴時間が増え、体重は平均1.5キログラムずつ増えていた。研究者らは、どんな食品がこの体重増加をもたらしたのかを把握するため、報告された食事のカロリーをもとにデータを解析した。すると、赤身肉および加工肉、糖で甘味をつけた飲料、ジャガイモ(マッシュポテトやフライドポテトなど)といった食品が上位に挙がった。しかし、他を大きく引き離して1位になった食品がポテトチップだった。

100グラムで約560キロカロリーのポテトチップが、4年当たり0.77キログラムの体重増加をもたらしていたのである。対照的に、デザート類による体重増加は0.2キログラム未満だった。

ポテトチップの原材料の食欲を引き起こすパワーは強力だ。まず表面の塩分が舌を魅了する。内部にはもっと魔力が潜んでいる。ポテトチップは脂質が多い。脂質はカロリーの大部分を担うだけでなく、噛んだ瞬間に独特の口当たりをもたらす。手についた油分は一般にべたついて不快だが、口の中の脂肪分は驚異的な感覚をもたらし、脳は瞬時に快楽信号を発する。

食べるともっと欲しくなる悪循環

話にはまだ続きがある。ポテトチップは糖分も多い。この糖分は、子ども向けに糖分を添加した一部の商品を除いて、成分表示には登場しない。正体はイモのデンプンだ。デンプンは炭水化物の一種だが、より正確にはグルコース(ブドウ糖)でできている。血糖値の「糖」そのものだ。

ハーバード公衆衛生大学院の疫学・栄養学准教授で、先の論文の著者の1人でもあるエリック・リムによれば、ジャガイモはそれほど甘くないが、噛んで飲み込んだ瞬間からグルコースが砂糖と同じような働きをするという。彼は私にこう話した。「デンプンは非常に吸収されやすく、同量の砂糖より速く吸収されるくらいです。すると血糖値が急上昇します。これが肥満に関わってきます」

体重を気にする人にとって、これは大問題だ。最近の研究によれば、血糖値が急上昇すると食べ物がもっと欲しくなるらしい。そしてこの作用は、最初に食べたものが何であれ、4時間ほど続くという。1時間ポテトチップを食べると、次の1時間はもっと欲しくなるのである。

(次回につづく)

マイケル・モス
『ニューヨーク・タイムズ』記者。カリフォルニア州ユーレカ生まれ。『ウォール・ストリート・ジャーナル』『ニューヨーク・ニュースデイ』などを経て現職。2010年に食肉汚染の調査報道でピュリッツァー賞を受ける。1999年と2006年にも同賞のファイナリストとなった。コロンビア大学大学院でジャーナリズム学准教授なども務める。ブルックリン在住。

フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠

著者:マイケル モス
出版:日経BP社
価格:2,160円(税込み)

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