多くの場合、企業も個人もこのレッドオーシャンでしのぎを削っています。もし、ディーンさんが20代のときに日本でデビューし、俳優としての活動を始動していたら……。当然のことながら、同世代の俳優たちと同じような立場で競争してこなければならなかったでしょう。

しかし、ディーンさんは、アジア圏を舞台に、英語、中国語、インドネシア語と堪能な語学力を生かし、モデル、役者、ミュージシャンとして多分野で実績を積んできました。その上で、30代半ばに海外から突然現れたことで、国内ではライバルが見当たらない逆輸入俳優として、レッドオーシャンでの競争に参加することなく、歩んできました。まさに自らブルーオーシャンを創造できたのです。

他国で実績積んだ俳優が次々に登場

ブルーオーシャンでの成功事例が注目されると、当然のことながら同業のライバルがその市場を狙ってきます。つまり、全く新しい市場を切り開いたブルーオーシャンでも、やがて競争が生まれるようになります。

俳優業の世界も例外ではありません。ディーンさんに続く形で、大谷亮平さんや葉山ヒロさんなど、すでにアジア圏の他国で実績を積み、30代になってから日本で活躍する俳優さんたちが次々に登場するようになりました。

そうなると、希少価値が薄れ、独自性が弱まってしまう恐れが出てきます。しかし、ディーンさんの場合は、映画やドラマだけでなく、ミュージシャンとしても活動しています。複数の言語を操り、クリエイターの資質も持ち合わせていますので、今後も独自のブルーオーシャンを開拓していけるのではないでしょうか。

22年1月には、ディーンさんが企画・プロデュースした主演映画『Pure Japanese』が全国公開される予定です。この作品では「現代社会における日本人の定義とは何か?」をテーマに、表向きの礼儀正しさや思慮深さの陰にチラつくサディスティックな性質の正体が描かれていくとのことです。まさに外から日本を見つめてきたクリエイターかつ表現者として、独自の力が発揮されることでしょう。

果たして今後、どのような新市場を創造していくのか……。NHK大河ドラマ『青天を衝(つ)け』で再び五代友厚を演じるディーンさんの雄姿をめでつつ、新市場開拓の観点からも興味深く追っていきたいと思います。

鈴木ともみ
 経済キャスター。国士舘大学政経学部兼任講師、早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。JazzEMPアンバサダー、日本記者クラブ会員。多様性キャリア研究所副所長。地上波初の株式市況中継番組を始め、国際金融都市構想に関する情報番組『Tokyo Financial Street』(STOCKVOICE TV)キャスターを務めるなど、テレビ、ラジオ、各種シンポジウムへ出演。雑誌やニュースサイトにてコラムを連載。近著に「資産寿命を延ばす逆算力」(シャスタインターナショナル)がある。

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