世界遺産、リバプールは抹消 今年は34件が追加登録

日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/9/22
ナショナルジオグラフィック日本版

古代海洋商業貿易の重要な港だった中国の泉州も、ユネスコの世界遺産リストに追加された(PHOTOGRAPH BY SONG WEIWEI, XINHUA/GETTY IMAGES)

2021年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産リストに新たに34件が追加された。

イラン縦貫鉄道、ヨーロッパの大温泉保養都市群、フランスの灯台、イタリアの14世紀のフレスコ画群、コートジボワールの日干しれんがのモスク群、ペルーの古代の太陽観測所、インドの「水に浮くレンガ」の寺など、新たに34件の遺産(以前から登録されているが、境界線が大幅に変更されたものを含めると37件)が、2020年から21年の推薦に基づいて登録された。

日本からも「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」と「北海道・北東北の縄文遺跡群」が新たに登録された。

現在、世界遺産に登録されているのは1154件。このリストに自国の自然遺産や文化遺産を登録しようと、各国は努力を重ねている。リストに載れば、名声と認知度が高まる。ひいては観光収入の増加、遺産の保護、修復のための資金獲得など、様々な好機をもたらしてくれる。

このロシア正教会の礼拝堂とパビリオンは、世界遺産に選ばれたドイツ、ダルムシュタットの芸術家村「マティルデンヘーエ」の一部(PHOTOGRAPH BY BERND WITTELSBACH, ALAMY)

22年に、ユネスコは「世界遺産条約」採択50周年の節目を迎える。その当初からの目的は、貴重な文化遺産および自然遺産を特定し、保存するための国際的な協力体制を確立することだ。

世界遺産に登録されることは、単に最高の場所というトロフィーをもらうことではない。国として、その場所を保護すると約束することだ。これまでに世界遺産条約を締約した194カ国は、新たな登録地を選ぶだけでなく、すでに登録された遺産の保護管理状況を監視する責任を負う。

自然災害や戦争、環境汚染、資金不足、強引な再開発などのために価値が失われそうな遺産があれば、締約国は可能な限り保護に努めなければならない。

世界遺産プログラムは、これまで目覚ましい成果を上げてきた。エジプトのギザの大ピラミッド付近を通る高速道路の建設計画を中止し、メキシコのコククジラが子を産み育てる海域の岩塩坑を閉鎖し、アフリカのビクトリアの滝のダム建設の承認を取り消すよう圧力を掛けた。

締約国の分担金を財源とする基金によって、パークレンジャーを雇い、公園用地を購入し、案内所を建て、寺院を修復している。過去50年近くの間に、世界遺産の制度は世界の特別な場所を認め、保護するための大きな力となった。