――地方は10万人単位だと伝統文化や自然環境の面でそれぞれ固有なものを持っていることが多いとされます。地方の多様な文化や環境を守っていくうえで、10万人構想は役立ちますか。

「地方の文化や環境も守りやすくなるだろう。『守りやすい国土』という観点でいえば、10万人都市の考え方は、都市機能の分散を前提にしており、防災面でも守りやすい単位として一つの問題提起になる」

――SDGsは国土計画にどのように関連しますか。

「SDGsの17の目標は、参加する単位に着想して3つのスケールに分けて考えられる。一つは個人の単位で、貧困を解消して個人が生き残るにはどのような生活や仕事の環境が望ましいか、現場の視点で考える原寸スケールだ。コロナ下では飲食業や観光業などの苦境が浮き彫りになり、母子家庭や女性の貧困が問題になっている。これらは自助に限界があり、共助や公助による支援が広がっている。災害でもしばしば起きる共助、公助の現場だ」

「次に地域や都市のレベルで持続性を高めるスケールだ。持続可能なまちづくりを掲げた計画づくりを進める自治体は増えている。例えば、コンパクトシティーを10万人規模や30万人規模でどう考えていくかが問われよう。3つめが国家や地球規模で考えるべき課題で、地震対策などの防災や新たな感染症に備えた防疫が重要になっている」

「やっかいなのが地球温暖化だ。これは個人、地域、国家のそれぞれのレベルで対応せざるをえない。集落単位や地域内のエネルギー循環など小さな単位で取り組むとともに、全体のエネルギーの供給、活用のあり方を考える必要がある」

――国土の持続可能性を高める観点では、東京圏への一極集中が依然として課題です。人口減少で地方の持続可能性に黄信号がともり、コロナ禍で都市の脆弱さが浮き彫りになり、首都直下地震が近づく中でも、東京圏への集中構造には大きな変化がみえません。国土計画への関心も低く、政治課題になりにくくなっています。

首都機能移転構想は立ち消えになった(国会議事堂)

「例えば、想定される首都直下地震に備えるには、たとえ一部であっても首都機能の移転をすべきだが、今の日本にはそうした課題に挑戦する馬力がなくなった気がしている。東京への集中構造をもたらしている首都機能をどうするか、改めて議論することが必要だ。人口を東京に引き寄せる磁力を残したまま、地方に10万人規模でやれといってもできるだろうか」

「今の国土計画づくりは、グローバル化やデジタル化、SDGsといった世界の動きをなぞりながら考えているだけのようにみえる。『守りやすい国土』という観点からは、コロナ対応をみても47都道府県ではバラバラ過ぎる。10万人都市を基準にするなら、それをまとめるブロックの単位として道州制を訴えたらどうか。国土形成計画では8ブロックに分けた広域地方計画をつくっており、これを制度化するくらいの意気込みをみせてほしい」

(編集委員 斉藤徹弥)

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