戸沼幸市・日本開発構想研究所顧問「防疫や防衛の観点が重要に」

新型コロナウイルス感染拡大など国土を取り巻く環境が大きく変わる中、新しい国土計画はどうあるべきか。国土計画づくりに詳しい日本開発構想研究所の戸沼幸市顧問に聞きました。

――今回の国土計画づくりではどんな点がポイントになりますか。

日本開発構想研究所の戸沼幸市顧問

「前回の国土形成計画では、東日本大震災を踏まえて『防災』が大きなテーマになった。今回は新型コロナウイルス禍を受けて感染症に強い国土のあり方を考える『防疫』が入ってくる。国土の安全の観点からは『防衛』も重要だ。国際関係が厳しさを増し、海洋問題が課題になる中、陸地だけでなく、6800余りある島を含む領海をどう守るか。防災、防疫、防衛の観点から『守りやすい国土をどうつくるか』が国土のあり方の大きな議論になるのではないか。そこではグローバルな課題として議論されているSDGs(持続可能な開発目標)の視点も重要になる」

――コロナは、都市部への人口集中が感染症に対してもろさを抱えていることを浮き彫りにしました。

「とりわけ首都圏のあり方が課題だ。東京23区とその外側、30キロ圏の神奈川、埼玉、千葉を見ると、コロナ下では23区から、それより外に人が移動している。テレワークの普及によって、時間距離と実際の個々の距離感が変わってきており、これを東京への集中構造の見直しにどうつなげていくかが課題だ。23区の人口が減ればよいのか、場合によっては首都機能の一部を移す必要もあるのかという議論をすべきだろう」

「感染状況をみると、北海道と沖縄は特異な状況にあると感じる。国土形成計画の上では、北海道と沖縄は別体系になっているが、防衛、防疫の観点からはこれらの地域をどう位置づけたらよいのか、議論があってもよい」

東京一極集中は感染症へのもろさを浮き彫りにした

――人口減少も加速しています。

「日本全体では人口が1億人になったときの国土のあり方をどう描くかが重要だ。ポイントの一つは外国人の受け入れで、コロナ前は訪日客として6000万人の交流人口を想定していたこともあった。ただ日本として外国人を入れたいのか、入れたくないのか、まだはっきりしない。世界的には難民、移民が大きな問題になっている。グローバル化も、よい話ばかりでなく、難民受け入れをどうするのかという問題も含めて考えていくべきだ」

――国土計画づくりの議論の材料として、国土交通省の「国土の長期展望専門委員会」が人口10万人を基準にした圏域づくりを提唱しました。

「国土計画で今も生き残っているのは、下河辺淳・元国土次官が熱心だった全国を200から300に分ける定住構想だ。第3次全国総合開発計画(三全総)で打ち出したもので、人口30万人をひとまとまりとして考えてきた。人口減少が進み、人が住まなくなる地域がどんどん拡大していく中、こうした地域をどう扱うかを含め、行政の区分けを含めて議論する必要があるだろう」

――30万人規模を基準にしたのは、総合病院や商業施設など生活に必要な都市機能をそろえるには、その規模が必要になるという考え方がありました。10万人都市は、デジタル化や高速道路の整備が進み、オンライン診療や緊急搬送などで連携することによって総合病院などの都市機能を補えることを前提としています。

「そうした連携のイメージがないと10万人都市は成り立たない。10万人といっても都市部の10万人と過疎地の10万人ではイメージが異なる。青森県の津軽地域の30万人圏を考えると、弘前市は約16万人だが、外港として鰺ケ沢港があり、交易の拠点になってきた。10万人圏がそれぞれ閉じた形でなく、外とつながる姿を描くことが重要だ。10万人は小都市の規模であり、どのような組み合わせをつくっていくか、各ブロックごとに具体像を描くべきだ」

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