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荒川和久、中野信子著 ディスカヴァー・トゥエンティワン 1100円(税込)

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テーマは「社会の『ソロ化』が本格化するこれからの時代をどう生きるか?」。海外からも注目される独身研究家と人気の脳科学者が対談する。まず興味を引くのは、あと十数年もすれば独身者が日本の人口の半分に達するという現実。親と子からなる「普通の世帯」は少数派になっていく。

「ひとりでいること=よくないこと」と決めつけがちな世の中の意識に、2人がそろって疑問を投げかける部分も印象的。それぞれの専門的見地から示される孤独の効用や「生物学的な自然さ」などに、勇気づけられる人も少なくないはず。荒川氏が強調する通り、この問題に正解はない。世間の視線の束縛から逃れて、自分の生き方を見直すきっかけになるかも。

要点1 旅行に音楽フェスにひとりで行く人多数

日本は近い将来「ソロ大国」になる。2015年から40年までに、独身者の比率は41%から47%までアップ。生涯未婚率(50歳時点の未婚率)も、男性は23%から約3割に、女性は14%から約2割に高まる。背景にあるのは、結婚を巡る意識の変化だ。特に、都市で働く女性は結婚する必要性を感じなくなっている。

恋愛には前向きでも結婚をためらうという感覚が、男性から女性に移っている。「一人志向」の強まりも目立つ。荒川氏が1都3県の20~50代未婚男女を対象に行った調査では、「国内旅行」は男女共7~8割、「音楽フェス・ライブ」は同じくほぼ半数が「一人で行ったことがある」と回答。そもそも結婚を望まない「ガチソロ」は全体の2割に上り、既婚者の3分の1も実はひとりが好きな「カゲソロ」だ。

要点2 ひとりで生きていける社会はソロ化が自然

他人との付き合いにはエネルギーがいるし、ストレスを伴う。だから人は、安全な環境に置かれるとひとりでいようとする。そもそも生物が集団行動をするのは、生命の危機(外敵の存在など)に立ち向かって生き延びるため。他者とつながるための愛情は、生存戦略の一要素にすぎないともいえる。ひとりでも生命を維持できる環境が整うほどソロ化が進むのは、自然なことなのだ。

いずれにしても、ただ集団に属しているから誘われるという(個人対個人の関係性が希薄な)付き合いに消耗するよりも、選択的にひとりでいるほうがよほどリッチな時間を過ごせる。SNS上の「友達」や楽しげな写真の数のような、目に見える要素だけで自分を評価してはいけない。

要点3 家族は「人質」? 「皆婚社会」の終焉

誰もが結婚しなければならないかのような社会の空気のベースには、企業の論理がある。扶養家族がいれば、会社のために献身的に働かざるを得ない。家族がいる者、マイホームのある(ローンを背負う)者ほど重要な地位に就け、独身者が軽視される傾向が強まったのはそのためだ。こうした「皆婚社会」は、この100年くらいの常識にすぎない。消費市場の牽引力を見ても、近年は「家族」から「ソロ」へのシフトが顕著に進む。

要点4 独身者は自らを「不幸」と評価しがち

ただ、独身者は「不幸度」が高い傾向にある。自分は幸福か不幸かを尋ねた調査によると、既婚男女はほぼ全年代で半数以上が幸福と答えたのに対し、未婚者の幸福度は明らかに低い。年齢とともに不幸度が高まり、40代でピークを迎える。これは世界的な傾向だ。なお、60代になると不幸度は下がる。

要点5 結婚を望む場合は相手を育てる意識を

恋愛市場は、男女共に3割の恋愛強者が牛耳る。彼らは能動的に他人と接する傾向があり、残る7割は総じて受け身。結婚したいのなら、自ら積極的に動くことが鍵となる。その際、高年収の男性にターゲットを絞る戦略は正しくない。年収400万円以上の未婚男性は全体の3割もいない。金持ちを見つけるより、自分で育てる意識を持つほうがいい。ほとんどの男性は結婚後に収入を上げている。

(手代木建)

[日経ウーマン 2021年9月号の記事を再構成]

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