『かげきしょうじょ!!』宝塚モチーフの青春群像アニメ
宝塚歌劇団をモチーフにした、女性だけが舞台に立つことを許された紅華歌劇団と、未来のスター育成と指導を行う紅華歌劇音楽学校。その100期生として入学したオスカル役に憧れる渡辺さらさ、元アイドルの奈良田愛ら少女たちの夢や希望、葛藤をみずみずしく描き出すテレビアニメ『かげきしょうじょ!!』が放送中だ。
斉木久美子が『MELODY』(白泉社)で連載中の少女マンガを原作に、新興スタジオ・PINE JAMが映像化。監督に就いた米田和弘は、原作について「登場人物にバックボーンと対立や葛藤があるちゃんとした人間ドラマ」であることに引かれたと言う。
「この子たちをどうやったら魅力的に描けるか、それをずっと考えていました。感情移入してもらうには上っ面をなぞるだけではダメで、様々なエンタテインメントの要素を持つ宝塚の楽しさも伝えられればと思っていましたが、当初『僕は宝塚をちゃんと好きになれるだろうか』という不安はありました」(米田監督、以下同)
しかしその不安は、宝塚を初観劇した日に払拭されたという。
「ハマらないと思っていたのですが、後半のショーがとにかくすごくて胸が震えたと言いますか、今ではすっかりファン(笑)。その部分ではさらさたちが目指す気持ちに寄り添えたと思います」
宝塚大劇場、旧音楽学校のロケハンに始まり、声優陣には元タカラジェンヌもおり、在籍時の話を聞くことも。「実際には生徒は歩かない場所もあるのですが、ドキュメントではなく作品なので、バランスを見ながら取り入れています」
原作者もシナリオ打ち合わせに参加
制作で特に力を入れた1つがシナリオだ。シリーズ構成には森下直を指名。「NHKの名ドラマ『フルスイング』(2008年)を見て嗚咽(おえつ)してしまった」と言い、全幅の信頼を置く。
「13話という決められた話数のなかで、どうしても原作から割愛しなければならない。だけど、はしょったと感じさせず、かつ登場人物の心の機微を大事に拾っていく必要がありました。森下さんの本は、登場人物の大事な部分が分かる。また、読んでいくと情景が浮かぶんです」
原作の斉木もシナリオ打ち合わせに参加。「例えば、愛が男性を苦手になったのには重い理由があり、どう描いていくかは難しくもあったんですが、斉木先生から『私はこれを描きたかったんです』という話があって、ならばこちらも覚悟を決めようと。細かいセリフの変更なども柔軟に対応していただきました」
映像も、印象的な演出やカットの連続だ。例えば1話ラスト付近の桜を見上げる愛の顔に影をわざと入れずリアルさより華やかさを生かしたり、トップスターが背負う羽など衣装や劇場の舞台上のライティングの当たり方、座席のスケールも精巧に作り上げている。
「夢に向かって一生懸命頑張っている少女たちの物語。『自分は何者になれるのか』と現状を模索している人たちが1歩先に進めるような、好きなことがあるならやってみよう!と伝えられたらいいなと思います」
(ライター 山内涼子)
[日経エンタテインメント! 2021年9月号の記事を再構成]
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