いつかは必ず晴れ間が出るという想いを込めた

「このケースを携えてツアーに出られなくなり、1年半以上がたちました。ただ、ずっと立ち止まっていたわけではなく、20年8月には、ライブ業界の救済を目的としてブルーノート東京で『SAVE LIVE MUSIC』というライブシリーズを開催しました。そのときはソロでしたが、第2弾の企画にあたり、今度は誰かと一緒にやりたいと思いました。

そのとき浮かんだのが、15年に共演した新日本フィルハーモニー交響楽団のコンサートマスター、西江辰郎さんです。6年前に、波長が合うなと感じ、またどこかで共演したいと思っていたので、『弦楽四重奏という形でご一緒しませんか』とお声がけしました。20年の年末から年始にかけて行ったステージは、自分が思っている以上の手応えがありました。

それで『これはちゃんと作品として残したい』と思って創り上げたのが、アルバム『シルヴァー・ライニング・スイート』です。タイトルには、新型コロナウイルス禍で苦しい状況を空になぞり、いまは雲に隠れているかもしれないけど、いつかは必ず晴れ間が出るという想いを込めました。インスピレーションは、コロナ禍で芽生えた感情です。ライブができず自宅にこもっているときも、新しいものを生み出すことが自分のエネルギーになりました。

とはいえ、感情はずっと右往左往しています。『頑張ろう』と思っていても、急きょコンサートがキャンセルになると落ち込む。何歩か前に進んだと思った矢先に、また後退するような感覚がずっと続いています。そんななかでも、自分が一番『へこたれてない』ときに、形として残せるものを作ろうとして完成させました。

カルテットとのレコーディングは素晴らしい体験でした。情熱をもってこのプロジェクトに取り組んでくれたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。私が作曲者でリーダー的な立ち位置ですが、いい意味で立場を越えて互いにものを言い合える関係性が築けた。それが心地よく、いい仲間に巡り合えたと胸が熱くなりました。

作品が形になると、一歩前進した実感が得られます。また、作品を録り、世界中のファンの皆さんに音楽を届けられることの重みを、ライブができていたころよりも感じるようになりました」

「カルテットとのレコーディングはすばらしい体験でした」と話す上原さん
海外で活動する秘訣は? 「最後に必要なのは根性(笑)」と語る上原さん
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