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温暖化に奇妙なシナリオ 国連8年ぶりの報告書に登場

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ナショナルジオグラフィック日本版

2021年8月9日、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第6次評価報告書が発表された。今回発表されたのは、3つに分かれた作業部会のうち、自然科学的根拠を担当する第1作業部会による報告で、科学的な分析をもとに、私たちを待ち受ける様々な未来を示している。8年ぶりに発表された報告書は、どう変わり、私たちの未来はどのように予測されているのか。前回との違いと、新たな予測シナリオを中心に解説する。

まず、前回の報告書と最も変わった点は、未来のシナリオを導き出すにあたり、人口や経済成長、教育、都市化、技術的および地政学的な動向など、社会経済的な要素を加えた点だ。つまり、世界が今後どのように発展してゆくのかについても考慮している。

より精緻になった気候予測:「RCP」と「SSP」

13年と14年に発表されたIPCCの第5次評価報告書では、温暖化ガスが将来に安定する濃度のレベルとそこに至るまでの代表的な道筋「RCP(representative concentration pathway:代表的濃度経路)」にもとづいて、未来の気候シナリオが予測された。この「RCPシナリオ」は、人類が気候変動を抑制するためにどれだけの努力をするかによって異なり、「低排出・高緩和のRCP2.6シナリオ」から「高排出・無緩和のRCP8.5シナリオ」まであった。

対して、今回の予測シナリオはたとえば「RCP2.6」ではなく「SSP1-2.6」のように表記される。2つ並んだ数字の前者が社会経済的な要素「SSP(shared socioeconomic pathway:共通社会経済経路)」で、後者がRCPだ。先に述べたように、SSPは未来の世界がどのように発展してゆくのかについての道筋であり、具体的には「1.持続可能」「2.中道」「3.地域対立」「4.格差」「5.化石燃料依存」という5つのパターンが用意された。これを加えたおかげで、様々なシナリオをより詳しく予測できるようになった。

5つのSSPのぞれぞれで「1.9」「2.6」「4.5」「7.0」「8.5」というRCPを検討した結果、最新の報告書では、比較的楽観的な2つのシナリオ(SSP1-1.9とSSP1-2.6)、中間的なシナリオ(SSP2-4.5)、暗いシナリオ(SSP3-7.0)、そして奇妙なシナリオ(SSP5-8.5)の5つに焦点が当てられた。

今回のRCPの1.9という値について、技術的な解決策に焦点を当てた取り組みをしている環境研究センター「ブレイクスルー・インスティテュート」で気候・エネルギーを担当するジーク・ハウスファザー氏は、産業革命以前からの気温上昇分をセ氏1.5度にするという目標を各国がパリ協定で採択したために追加されたという。さらに、前報告書にも記されていた2.6と4.5と8.5に加え、4.5と8.5のギャップを埋める7.0という値が採用された。

楽観的なシナリオ、暗いシナリオ、奇妙なシナリオ

持続可能な社会を実現した楽観的なシナリオは、いずれも地球温暖化を2度未満に抑えるというパリ協定の目標を達成している。各国は直ちに積極的に化石燃料の使用を削減し、21世紀半ばから後半にかけて世界の二酸化炭素排出量は正味ゼロになる。その後、まだ大規模な実証実験が行われていない技術を使って空気中の大量の二酸化炭素を回収し、排出量はマイナスに転じる。

今世紀末には、第1の楽観的シナリオでは1.4度、第2の楽観的シナリオでは1.8度、気温が上昇していることになる。2つのシナリオの違いは、排出量削減の速度と二酸化炭素回収技術を導入するペースだ。

この程度の温暖化であれば、異常気象の頻度および深刻度こそ上昇し、最大0.6メートルの海面上昇が生じるものの、より深刻な気候変動の影響は回避される。同時に、これらの楽観的なシナリオのいずれにおいても、力強い経済成長と教育や医療に対する幅広い投資により、世界の生活水準が向上する。21世紀末には、世界はより豊かに、より平等になっており、世界的な協力や資源の共有が不十分な場合に比べて、社会は変化した気候に適応しやすくなっている。

中間的なシナリオはそこまでバラ色ではない。この場合、二酸化炭素排出量は今世紀半ばまで高水準で推移し、その後減少に転じる。21世紀末には、世界の気温は約2.7度上昇していることになる。ハウスファザー氏によると、このシナリオはパリ協定で各国が誓約した2030年までの目標と「おおむね一致」しており、世界がより積極的な排出削減策を採用できなかった場合の未来を表している。

これはまた、社会経済的発展のこれまでの歴史的パターンに最も近い未来でもある。中間的ストーリーにおいては、世界の経済成長にムラがあり、富と社会的平等の向上に向けて前進する国もあれば、後れを取る国もある。発展途上国の出生率は依然として高く、世界人口は今世紀末に約95億人でピークを迎える。その時、世界の多くの地域は、深刻な気候変動の影響に対して脆弱なままだ。

さらに、IPCCが描く暗いシナリオでは、ナショナリズムが各国を強く支配し、グローバルな協力関係が崩壊、経済成長と社会的進歩は停滞する。世界の多くの貧困国では出生率が高いままで、世界人口は現在の約80億人から今世紀末には120億人以上に増加する。

二酸化炭素(CO2)排出量も今世紀中は増加し続け、2100年には地球の気温が産業革命以前の水準より3.6度も高くなる。干ばつや洪水がひどくなり、夏の北極海の海氷は消滅し、かつては50年に1度だった熱波の発生頻度が40倍近くになる。

最後に、奇妙な、まるでSFのようなシナリオがある。人類は二酸化炭素排出曲線を元に戻せないばかりか、化石燃料の採掘量を倍増させ、エネルギー集約型のライフスタイルを加速させる。今世紀を通して各国がより多くの石炭を採掘して燃焼させ、世界の気温はなんと4.4度も上昇、数百万年ぶりの暑さになる。

しかし、このシナリオでは、世界中の国々が経済的、社会的に大きく発展するため、化石燃料の恩恵があらゆる場所に行き渡り、今世紀末には「非常に豊かで、非常に平等で、非常にハイテク」とハウスファザー氏が表現する社会が実現することになる。地球は地獄のような暑さだが、ナショナリズムに支配された貧しく不平等な世界においてこうした状態を迎えるよりは、人類にとって適応しやすいのかもしれない。

奇妙なシナリオが加わった理由

こうした奇妙なシナリオは思考実験としては面白いかもしれない。だが、今世紀中に人類が既知の埋蔵量を上回る量の石炭を燃やす状況はかなり非現実的だ。市場原理と気候変動政策によって、富裕国における石炭使用量は減少している(米国の全発電量に占める石炭の割合は、07年には50%近くあったが、現在は20%未満になっている)。

最新の報告書でもその点を認めている。しかし、前回の報告書との継続性もふまえて、このシナリオを含めることにした(今回のSSP5-8.5は、前回のRCP8.5とほぼ同様だ)。

また、石炭産業が突然復活することはなくても、永久凍土の融解によるCO2やメタンの大量放出など、気候システム内のフィードバックによって温暖化のレベルが最悪の予測値に向かって押し上げられる可能性もある。さらに、人為的に排出されたCO2に対して、現在考えられているよりも気候が敏感に反応した場合にも同様のことが起こるかもしれない。

「IPCCとしては、最も極端な可能性を考慮する必要があります」と米アリゾナ大学の気候科学者で、IPCC報告書の共同執筆者であるジェシカ・ティアニー氏は語る。「最も可能性が高いと思われるシナリオだけでは、起こり得る結果の幅を知ることができません」

温暖化を1.5度未満に抑えるという楽観的なシナリオは、これまでの気候変動対策のペースの遅さを考えると、比較的可能性が低いと思われる。しかし、それも変わるかもしれない。

ハウスファザー氏は、世界のCO2排出量の約3分の2を占める国々が、今世紀半ばまでに排出量をゼロにすることを約束していると指摘する。もちろん相当に難しいことではあるものの、もしも、これらの国が約束を果たし、他の発展途上国も追随するならば、「気温の上昇は1.5~2度に十分おさまります」

「私たちはまだ、より良い道を選べるのです」と同氏は語る。

(文 MADELEINE STONE、訳 桜木敬子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年8月26日付]

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