日経クロストレンド

米国での低アルコール飲料盛況がヒントに

サッポロの推測を後押ししたのが、米国の若者の間で「ハードセルツァー」と呼ばれる低アルコール飲料がブームとなっている状況だ。

ハードセルツァーとは、米国で19年ごろからブームとなっている、フレーバー付きアルコール入り炭酸水の総称だ。サトウキビの糖蜜由来アルコールを使用しており、「低アルコール、甘くない、低カロリー」が特徴だ。米国ではハードセルツァーの流行に伴い、RTDアルコール飲料市場も急成長。今では数々のハードセルツァーの新商品が誕生している。

ヒットの要因としては、若年層の「酔いたくない、健康志向」にマッチして、かつ男女両方に人気なことが大きいとされる。これまで米国では、フレーバーを使用したアルコールドリンクは甘く、女性向けのイメージがあった。しかし、ハードセルツァーは低アルコールで甘くなく爽快、デザインもカッコよくスタイリッシュで、男性からの支持も獲得した。

市場調査の結果と米国での状況を受け、サッポロは「ハードセルツァーを日本人になじむような味・生活スタイルにアレンジして売り出そう」と考えた。「日本における市場背景は米国と似ていて、コロナ禍によってより市場背景が加速した。米国で販売されているハードセルツァーをヒントに、日本のニーズに合わせて商品設計をした」(市川氏)。要するに「サッポロ WATER SOUR」は「日本版ハードセルツァー」というわけだ。

「これまでにない、かつなじみがある」コピーを意識

プロモーションにおいては、「ハードセルツァーを『炭酸水感覚のお酒』と日本語表現に、甘くないことを『無糖』と言い換えている。新しいお酒であるかを市場にいかに浸透させられるかが重要なポイントだ」(市川氏)

パッケージにも「炭酸水テイスト」「無糖」の文字がある

米国ではヒットしているものの、まだ日本ではなじみや知名度が低いため、ハードセルツァーを「炭酸水感覚のお酒」と表現。これによって、商品イメージが分かりやすくなり、スムーズに普及させられると考えた。同時に、これまでにない酒類カテゴリーとしての印象が付き、新しい市場も開拓しやすくなる。

甘くないことを「無糖」と表現しているのも、炭酸水感覚でライトな味わいであることを訴求するためだ。また、近年、無糖を訴求したRTDアルコール飲料商品は市場が拡大しており、多くのターゲット層にアピールできるという思惑もある。

味わいも日本人好みに寄せた。度数は日本の低アルコールRTDの基準である3%に合わせ、フレーバーは「レモン」「オレンジ」と缶チューハイでなじみが深いものを選んだ。

商談状況は「非常に順調。新カテゴリーに対する姿勢に期待が大きいのでは」と市川氏。サッポロの調査では、コロナ禍で「飲酒時間が増えた人は42%、残り58%の大半は変わらず(21年1月、380人に調査)」という結果も出ており、巣ごもり需要の影響も見える。

同社は「サッポロ WATER SOUR」の20~34歳における潜在顧客人口を、500万人以上と想定。若年層のニーズ変化を反映した「サッポロ WATER SOUR」が、今後どれほど浸透するか注目だ。

(ライター 佐藤隼秀、写真提供 サッポロビール)

[日経クロストレンド 2021年8月23日の記事を再構成]

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