気を使ったつもりが、みるみる相手が不機嫌になってしまった覚えはありませんか? 自分でも無意識のうちに使っている言葉を見直し、人間関係を円滑にするスキルを教えます。
「マイナス口調」の常態化で損をしている人が多い
相手を傷つけないようにやんわり伝えたり、回りくどく理由を述べたり──実はこの日本特有のコミュニケーションでは、「言いたいことが全く相手に伝わらず、お互いにストレスがたまるだけ」と、産業カウンセラーとして2万人以上に指導してきた大野萌子さんは言う。「コミュニケーションの基本は言葉。職場でも家庭でも、自分の気持ちを『率直』かつ『穏やか』に伝えるのがポイントです」。
また、無意識のうちに「マイナス発言」が習慣化し、損をする人も多いので気を付けたい。例えば、誰かを褒めるときに「『やれば』できる」「『今日は』調子がいいね」と余計な一言があるとそれが嫌みになったり、ハラスメントになったりしかねない。「私たちは自分を日本語の自由な使い手だと思っていますが、実はそうではない。特に習慣は恐ろしく、批判的・否定的なニュアンスを含む言葉でも、繰り返し使ってしまう。今日からちょっとした言い換えを意識して、人間関係が良くなるトレーニングを重ねましょう」。

「挨拶」編 その人の第一印象を決める
×仕事は順調?
○最近、どう?
「はい」か「いいえ」を促す質問で問い詰めない
「はい」か「いいえ」の2択しかない質問は、相手を追い詰めるクローズドクエスチョン。「どう?」というオープンクエスチョンなら、聞かれたほうも答えやすく、場も和む。
×大変ですね
○仕事が忙しいんですね
「大変」は薄っぺらい同情に捉えられがち
物事の大変さは当事者にしか分からない。「相手が『仕事が忙しくて大変』と言うなら、『仕事が忙しいんですね』と発した言葉を繰り返すほうが、気持ちに寄り添えます」。
×連絡がなかったから心配していた
○久しぶりに連絡をもらえてうれしい
相手を責めずに、自分の気持ちを伝えて
「連絡がなかった」と言われると、相手は責められているように感じる。それよりも「連絡をくれてありがとう」「うれしい!」と感謝の言葉を伝えるほうが、気持ち良く話せる。
「お願いごと」編 気持ち良く引き受けてもらうために
×ちゃんと しっかり 徹底的に
○この作業はここまでやってください
曖昧な表現は危険! 具体的に伝えて
「ちゃんと」「しっかり」「徹底的」では、「何をどこまでやるか」が伝わらない。「これも、『後で』と同じ危険な言葉。具体的な内容や数値を示して、行き違いを防いで!」。
×できれば早めにお願いします
○月末までにお願いします
時間や期日をしっかり明示
「できれば早め」は今日中か、今週中か(人によっては今月中という場合も!)、受け取り方が違う。「期日を示し、『難しい場合はご相談ください』と言うほうがスマート」。
×それはしないでください
○それはこうしてください
お願い事は否定形でなく「肯定形」で
人は「否定形で指示される」より、「肯定形で依頼される」ほうが気分良く動ける。「否定形でばかり話していると、ネガティブな印象を与えて自分の好感度が下がりますよ」。
気を使ったつもりで「できれば」と言うと、相手が「できないなら、やらなくていいんだな」と、勝手に優先順位を下げてしまう場合が。頼み事は、締め切りを確実に伝えよう。