N大学経済学部3年生の美咲は、安藤先生のところへ就活の相談に来ています。前回は、企業研究のやり方について聞きました。そして志望企業での働き方の実態を知りたいという美咲に対して、先生は美咲にとっての「理想の働き方」とはどういうものかをまず尋ねました。
理想の働き方、時間軸で考える
美咲 理想の働き方ですか……。そうですねぇ、理想を言っていいなら、忙しいときは仕方ないですけど、基本的には定時に帰れることや在宅でも仕事ができる柔軟性、あと結婚して子供ができた後も働きやすい職場だといいなと思います。
安藤先生 なるほど。それでは賃金など収入面ではどうですか?
美咲 賃金って給料ですよね。ふつうに生活できる程度の給料はほしいです。あと、たまに高価なものを買ったり、おいしいものを食べたりもしたいです。それに、将来のために貯金もしたいなぁ。だから、会社の福利厚生も結構重要です。家賃補助や寮があるといいですね。
安藤先生 いろいろと具体的な要望があるようですね(笑)。
美咲 はい。でも、こんなことばかりを説明会できいたり、先輩に質問したりしてくる学生って、企業も嫌ですよね? それは私も分かっています。まだ成果も何も出してない学生が、働き方や福利厚生のことばかりをきいてくるなんて、私が先輩でも嫌ですから。だから聞けないし、あんまり実際のところはわからないんです……。
安藤先生 そうですか。それでは、松本さんの理想の働き方を書き出してみましょう。その際に、注意してほしいことが2点あります。
1点目は、希望する働き方は時間の経過にしたがって変わるということです。たとえば、入社3年目くらいまでは、仕事を覚えるために忙しくてもいいと思えるかもしれません。しかし、結婚して子供ができたら、休みを多くとりたいなと思うようになるかもしれない。このように時間軸を意識して記入してみてください。
2点目は、なるべく具体的に想像するということです。例えば、仕事をするときの服装はどんなものか、在宅ワークの頻度はどの程度か、転勤の有無なども含めて、できる限り詳細に自分の希望を想像してみましょう。
(かなり悩みましたが、美咲は自分のノートに記入しました)
美咲 書けました!どうでしょうか?
安藤先生 お疲れさまでした。とても具体的に書けましたね。それでは、見ていきましょう。
美咲 志望企業に見せるものではないと思ったら、遠慮せずにたくさん書くことができました(笑)。
安藤先生 最初に、「残業が多くてもがんばる」というところについてです。実は、会社側が命令して、労働者側が受け入れたとしても、時間外労働ができる時間には法律で定められた上限があります。
美咲 はい。それは労働経済論で勉強しました。企業側と労働者が最低限守る必要があるルールがあるということですよね。