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恐竜じゃなかった 卵化石は背丈ほどある古代巨大ガメ

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ナショナルジオグラフィック日本版

2018年夏、中国河南省のある農家で、古生物学者のハン・フェングル氏とジアン・ハイシュイ氏は、丸みを帯びた岩石が詰まった箱をのぞきこんでいた。この地域は恐竜の卵が出土することで知られ、農家の主は自宅近くで化石を収集していた。

収集品の中で、一つの球形の石が学者たちの目を引いた。ビリヤードのボールのような見た目で、これまで見た恐竜の卵とも違っていた。

武漢の中国地質大学を研究拠点とするハン氏とジアン氏は、当初、その卵が新種の恐竜のものかもしれないと考え、慎重に調べた。その結果、もっと希少な卵であることが判明した。絶滅した巨大ガメの卵だったのだ。

21年8月18日付で学術誌「英国王立協会紀要B」に掲載された新たな論文によれば、この新しく発見された化石は、絶滅したナンシュンケリス科の陸生ガメのグループだという。成長すると非常に大きくなるカメで、1億4500万年前から6600万年前の白亜紀に、恐竜とともに生息していた。この卵(同時代の卵の化石としては最大級)を産んだカメはとりわけ巨大で、その甲羅の長さは平均的な人間の身長ほどだったと研究チームは推定している。

「どう考えても、小型のカメではありません」。論文の著者のひとりで、カナダ、カルガリー大学の古生物学者ダーラ・ゼレニツキー氏は話す。

そもそも卵の中の子(胚)の化石が見つかることはめったにない。発育過程にある動物のデリケートな組織や骨は、歳月とともにたやすく分解してしまうからだ。カメの胚は、恐竜の胚よりもさらに見つかりにくい。「カメの卵は小さく殻が薄いことがその理由でしょう」とゼレニツキー氏は考えている。過去にもカメの胚の化石は発見されているが、系統を分類できるほど良好な保存状態のものはなかった。

今回発表された化石は、このグループに属する卵を特定したり、太古のカメの巣作りや適応について知るためのヒントを研究チームにもたらしてくれた。

米デンバー自然科学博物館の古脊椎動物学部門のアソシエイト・キュレーターで、今回の研究には参加していないタイラー・ライソン氏は、一つの化石から得られる結論は限られているものの、今回の古代カメの胚の発見は、さらに多くの発見の可能性を示唆するものだと言う。「あとは時間の問題です」

卵の中の状態をCTスキャンで再現

ハン氏とジアン氏が最初にこの卵の化石を目にした時、一対の細い骨が片側の割れ目から突き出ていた。それだけが内部に宝物が眠っていることを示す唯一の手がかりだった。農民は、学者たちの研究にその卵を提供することに同意し、その奇妙な卵の化石を見つけた場所に2人を案内してくれた。複数の卵の化石を見つけたが、どれも保存状態は良くなかったと、ハン氏はメールで伝えている。

研究室に戻った2人は、この卵をコンピューター断層撮影装置(CT)スキャンし、化石の内部をX線で観察した。CT画像では、卵の内部にバラバラになった骨がからみあっている様子が明らかになった。この乱雑な状態を解明するため、骨の1本1本を3次元(3D)で再現し、コンピューター上に小さな骨格を組み立てることができた。

米カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校の爬虫(はちゅう)類進化生物学者で、胚の研究を専門とするラウル・ディアス氏は、この胚は全般的に現生のカメと驚くほどよく似ていると言う。ディアス氏によれば、胚の平たい肋骨は、カメが成長するにつれて硬くなり、拡張して、身を守る甲羅の基底構造となったはずだという。「私の頭の中では、研究室で目にするカメとほとんど区別がつきません」。今回の研究に参加していないディアス氏はこう話している。

だが、この古代カメが属するグループを特定できる手がかりも確認されている。たとえば、上顎骨のやや角ばった形状や後端がギザギザになっている点などは、古代カメのナンシュンケリス科に酷似していると、ゼレニツキー氏は指摘する。

丈夫な卵殻

ところで、今回発見された卵は、殻の頑丈さに際立った特徴がある。2ミリもの厚さがあるのだ。現在のカメも、卵殻の厚さは一様ではなく、ウミガメの卵殻は柔らかい皮革状だが、ガラパゴスゾウガメの卵殻は硬い。研究チームによると、そのゾウガメの卵殻と比べても、今回の卵殻は約4倍もの厚さがあるという。

古代のカメの卵殻が、これほど頑丈だった理由ははっきりしない。卵と同じ岩石層から発見された植物化石から、当時の気候は乾燥していたと推定されている。卵殻が厚いのは卵から失われる水分量を抑えるためで、乾燥に対する適応だったのかもしれない。またカメが地中深くに巣を掘って卵を産んでも、卵が割れてしまうことを防ぐためだったかもしれない。

 だが卵殻の硬さは、厚くなった理由よりも、「どうやってふ化したのか」(ゼレニツキー氏)のほうに疑問を投げかける。ふ化しようとする子ガメは、四肢を相当に屈伸しなければ卵から出られなかったはずだ。

恐竜とともに姿を消す

ナンシュンケリス科のカメが絶滅したのは、このカメが陸にすみ、陸に卵を産んでいたことが一因だったかもしれない。約6600万年前に巨大な小惑星が地球に衝突した時、このグループのカメは、非鳥類型恐竜とともに絶滅した。この衝突のエネルギーは、煮えたぎる高温の岩石を空中に飛散させ、陸地の広大な部分が発火した。「地表のありとあらゆるものが沸騰したのです」とライソン氏は言う。

「でも、カメの仲間の多くは、絶滅を免れることができたのです」。ナンシュンケリス科の近縁である淡水性のカメもそうだ。水中での生活が、小惑星の爆風からカメを守ってくれたのかもしれない。食生活もカメの絶滅に大きな役割を果たした可能性がある。ナンシュンケリス科のカメは完全な草食性だったので、爆風を生き延びたとしても、小惑星衝突後の地球では餌を見つけられなくなったと考えられる。

ナンシュンケリス科のカメのような卵殻は、小惑星衝突後には見られなくなった。おそらく分厚い殻が激変した環境に適さなかったのだろうと専門家らは考えている。もちろん、こうした卵殻が姿を消した明確な理由を特定するには、さらなる研究が必要となる。

米ルイジアナ州立大学の進化生物学者、エマ・シャクナー氏は、今回の研究から古生物学研究の進歩を実感できると言う(シャクナー氏は今回の研究には参加していない)。化石を壊すことはできないので、かつては化石の外部しか調査できなかった。だが、今ではデジタル技術による化石内部の再構成が可能になった。シャクナー氏は、この研究について「このモデルが特別な価値をもたらしていると感じます」と話す。

とはいえ、今回の論文は、古代のカメについての謎が依然として山積みになっていることも明らかにした。恐竜の研究者と比べると「古代カメを研究する科学者はずっと少ない」とライソン氏は指摘する。だが、カメは、限りない興味を抱かせてくれる生き物だ。「カメは、ほかの動物とはまったく異なる構造を持っていますからね」

ライソン氏は、今回の化石の卵の胚のような発見に触発された若い世代が、この不思議な生き物の謎を解明する研究に加わってくれることを願い、「カメの化石の優秀な研究者」がもっと必要だと話した。

(文 MAYA WEI-HAAS、訳 稲永浩子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2021年8月23日付]

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