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沢田道隆・花王会長(右)と伊藤邦雄・一橋大学CFO教育研究センター長

沢田道隆・花王会長(右)と伊藤邦雄・一橋大学CFO教育研究センター長

ESG(環境・社会・企業統治)先進企業と呼ばれる花王。世界の企業の環境の取り組みを格付けする非政府組織CDPから日本企業で初めての「トリプルA」を獲得、ESGへの取り組みを社員の評価に反映する人事制度も導入した。環境対応には相当のコストもかかるが、「ESG経営」は企業価値向上につながるのか。一橋大学CFO教育研究センター長の伊藤邦雄名誉教授が花王の沢田道隆会長にESG経営の神髄に迫った。

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伊藤 沢田さんは「ESGを経営のど真ん中に置く」と宣言しています。ただ、日本ではいまだにROE(自己資本利益率)やROIC(投下資本回収率)、そしてEVA(経済的付加価値)など資本生産性とESGを二項対立的に捉える企業や経営者が少なくありません。これをどのように整理して考えていますか。

環境と業績のROESGで花王は日本勢トップ

沢田道隆・花王会長

沢田道隆・花王会長

沢田 花王では、ESGとEVAなど資本生産性を"融合"して捉えることにしました。これまでは環境対応すると、その分のコストがかかると、我々の持ち出しになる面は確かにありました。しかし、別々に考えるのはなく、融合しようと。商品のデザイン段階からリサイクルや最終処理まで想定し、ESGを組み込んだ商品をつくり、経営スタイル自体も見直してゆきます。

その先駆的な商品が2009年に発売した世界初の超濃縮液体洗剤「アタックNeo」だった。すすぎが1回でいいので、節水・節電・時短につながります。また、超濃縮の液体洗剤ですから、従来商品よりも容器が小さくなった。当然使用するプラスチックは大幅に削減された。トラック輸送量も減り、環境への負荷が大きく軽減されたのです。確かに開発費はかかりましたが、売り上げは伸び、財務的にもプラスになりました。

伊藤 私が提唱している「ROESG」という新しい経営指標があります。これはESGスコアとROEを使って企業を総合評価したものですが、19年に日本経済新聞社が実施したROESG調査では日本勢では花王が首位だった。世界トップはデンマークの医薬品企業、ノボノルディスクです。21年3月には第2回調査も行われましたが、このデータをグラフ化して驚きました。縦軸にESGスコア、横軸にROEをとって、分布図を作成すると、3つの群に分かれます。ESGは高いが、ROEは低い群れ、ESGは低いが、ROEは高い群れ、そしてESG、ROEともに高い群れです。花王はしっかりと両方高い群れに位置されていました。資本市場からの評価も高まっており、成果が出ていますね。

沢田 ただ、ESG投資の効果、リターンは遅れて出てくる場合が多い。その間、経営的には我慢しないといけません。EVA的な考え方だと、最小の資本で、より短い期間に最大のリターンを得るというのが正しい。ただ、ESG投資だと、5年で黒字転換とはいかないケースもある。そこで収益が出るのに5年以上かかるESG投資に関しては、社長管理の案件として特別な枠を設けて実行します。2030年を目標とした二酸化炭素などの温暖化ガス削減に寄与する必要もあり、長期的な視点の投資も不可欠です。

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