TikTokで映画に挑戦

ショートムービーのフォーマットで表現できることはまだまだあると佐藤氏は語る。エンタテインメント分野への拡大にも意欲的だ。

「例えば食事に行ったとき、ある年齢以上の人たちは写真を撮りますが、若い方の多くは動画を撮ります。動画に対する距離感が圧倒的に違う。ただそれは若いから特別なのではありません。大人だって慣れてくれば動画のほうが面白いと感じるようになるんだと思います。本当に大きな波が来るのはこれからです。

短尺動画の可能性はとても大きいと感じています。単なる長尺動画のダイジェストでもない。小説でも長編小説と短編小説はまるで違いますよね。マンガも長編と4コマでは構成から違う。面白い短尺動画を作るなら、最初から短尺としてオリジナルを作る必要があります。実際、人気クリエイターたちは、少しでもクオリティーをあげるため、どこでコンマ1秒を削るかを真剣に考えています。

先ほど『許容力と幅広さがTikTokの特徴』と話しましたが、同じ意味でハイエンドにもローエンドにも振れるとも考えています。

ハイエンドに挑んだのが、『TikTok TOHO Film Festival2021』です。多くの人が映像表現の最高峰と思っている『映画』にTikTokを近づけたらどうなるのか、というところから生まれた挑戦です。TikTokクリエイターが監督をつとめた縦型映画『幸ト音(さちとおと)』という企画もあります。映画の撮影をすべてスマートフォンだけで行った作品なんですが、これがいいんですよ。ぜひ見てほしい。

それと同時に、投稿のハードルも下げていきたいと考えています。日本は海外に比べて、自分で投稿せずに動画を見るだけの“ROM(Read Only Member)”の人が多いというデータもあります。投稿するのは若い方の方が多い傾向にありますが、ROMの方は40代も珍しくなくなっている。エフェクト機能などで投稿のハードルを下げて、動画ネーティブではない世代の人がVlog的に投稿できるような仕掛けも作っていきたいと思っています。

今後力を入れたいコンテンツの1つとして、日本の強みであるアニメやマンガに注目しています。ただこれらに関しては一気にできるものではない。TikTokで使うことのできる音楽に関しては、著作権などの権利をすべてクリアしていますが、アニメやマンガに関しても権利関係をクリアにしながら進めていくつもりです。新作だけではなく旧作のマンガでもいいと思うんです。アニメやマンガの旧作は、プロモーション手段が少なくなっているので、素材を提供できれば様々な二次創作が生まれ、それがバズることで絶対にオリジナルを見たくなる。電子コミックは旧作がけん引したと言われていますが、それと同じことができるはずだと考えています。突破口はそこだと思うので、ご賛同いただける作家さんや作品、権利元を徐々に増やしつつ、じっくり取り組んでいきます」

さとう・よういち TikTok Japan, General Manager。東洋経済新報社、マイクロソフト、グーグルを経て2019年9月にTikTok JapanにHead of Business Developmentとして入社。20年1月より現職。

(ライター 鈴木朋子)

※日経エンタテインメント! 2021年10月号ではTikTokの人気の理由を探る特集『TikTokのショート動画革命 』を掲載しています。

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