ビジネスで他者を巻き込むために必須のスキル

「考えること、書くことは事務職、技術職どちらにとっても必須のビジネススキルです。学生さんからはどういうスキルや資格が必要か聞かれることも多いのですが、入社して一番困るのはスキルや資格がないことではありません。それよりも、自分の考えをまとめられないとか文章で自分の意図を他者にうまく伝えられないという壁に直面する人が多いのです」

藤崎さんはビジネスの現場での「考える」「書く」は学生時代のそれとは決定的に異なるという。

「学生は、自分で考えるというよりは教えてもらうという意識になりがち。勉強では答えはだいたい一つに決まっていて、正解にたどり着くまでのプロセスを問われることが多い。でもビジネスには正解はなく、答えを自ら作っていかなくてはなりません。また学生時代は『こうすべきだ』と論じるところまででよしとされますが、ビジネスは実際にいろいろな人を巻き込みながら実行し、成果を出してナンボの世界です。自分の考えを筋道立てて書く力がなければ、他者を説得し巻き込むことはできません」

「自分の考えをまとめられないとか文章で自分の意図を他者にうまく伝えられないという壁に直面する人が多い」と語る藤崎さん

同書では、読み手の関心・疑問に向かって書く方法や、「So What?(それで何が言いたいのか?)」という自問を繰り返しながら考えを形にしていく方法などが具体的に書かれている。思考においても文章化においてもカギとなるのは、結論→根拠→具体的な事例という「ピラミッド構造」だ。著者は、毎日のメールもピラミッド構造で書くことをすすめる。学生とメールをやりとりする機会が多い藤崎さんもこう話す。

「最近の学生さんのメールは、文章がこなれているし言葉遣いも丁寧で感心することも多いのですが、往々にして結論が最後に書かれています。でもビジネスのメールでは、結論は最初に書くべきですし、お客さまと話す時やプレゼンの時もピラミッド構造が原則です。この本を読むことで、その違いを意識してもらえればと思います」

テレワーク時代、「伝えられる力」より重要に

NTTドコモは社員2万人超の大組織。しかも通信だけでなく金融・決済サービスやショッピング・生活関連サービスなど幅広い事業を展開している。藤崎さんによると、一人の社員が複数のプロジェクトに関わることも多く、さまざまな場で新しいアイデアを求められる。だからこそ、自分の意図を伝えられるかがポイントになると強調する。

「組織が大きい分、自分の書いた資料が部署を超えて共有されていく機会も多い。若手は見栄えがするきれいなパワーポイントを作ることに一生懸命になりがちなのですが、見た目よりも話の組み立てが論理的かどうかのほうが重要です。資料を見ただけで読み手がきちんと意図やストーリーを理解できるかを意識してほしい」

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