渡邊圭祐 ドラマ『推しの王子様』いい雰囲気伝われば
2018年に『仮面ライダージオウ』の仮面ライダーウォズ役で俳優デビューした渡邊圭祐。その後、連ドラ『恋はつづくよどこまでも』『MIU404』(共に20年)と立て続けにヒット作に出演した。菅田将暉や神木隆之介らと同じ、黄金世代の93年生まれ。20代半ばでの遅めのキャリアスタートながらめきめきと頭角を現し、4月期の『恋はDeepに』では主演の綾野剛の弟役を好演した。
そして現在は、『推しの王子様』(フジテレビ系)に出演中。乙女ゲームを手掛けるベンチャー企業の社長である日高泉美が、自分の理想を詰め込んだゲームキャラクターのケント様とそっくりな五十嵐航と偶然出会い、無気力で無作法な航を理想の男性に育てていく。泉美役で比嘉愛未が主演し、航役を渡邊が演じている。
ラブストーリーに出演するのは『恋つづ』、配信ドラマの『love distance』(20年)、『恋はDeepに』に続き4作目。俳優を始めて3年で、早くもGP帯(19~23時)連ドラのヒロインの相手役に抜てきされた渡邊に話を聞いた。[日経エンタテインメント! 2021年9月号の記事を再構成]
「うれしかったですね、シンプルに。プロデューサーさんとお話をする機会がちょっと前にありまして。半分オーディションみたいな感じだったのか、後日、マネジャーさんから『この間会った方が作るドラマで仕事が決まったよ』と報告を受けて。こんなに大きな役なら、もうちょっと早めに言ってほしかったのに(笑)。でも、いつも通りの素のままでお話ししたのが、航のイメージには合っていたのかなとも思いました。
今回は撮影に入るまでに、プロデューサーさんや監督とディスカッションしたり、いつもより準備の時間を長めにいただけたんです。航は全話を通して、外面も中身もどんどん変化して成長していくので、『ここがキーになる』というすり合わせも必要で。僕と監督で本読みをやらせてもらいつつ、初期の航と、泉美さんに出会ってからの航というところの温度の違いも、イメージを共有してから撮影に臨めました」
現状は恋の部分は意識せず
ジャンルとしては"ロマンティック・コメディ"で、ドラマオリジナルストーリー。"逆マイ・フェア・レディ"と謳(うた)う設定が今の時代ならではで、女性社長が年下の残念男子を教育していく。
「台本を読んですごく面白いと思いました。設定が新しいですし、題材が"推しごと"ですからね。自分が夢中になる"推し"がいることで、日常が楽しくなったりするのって、前向きなこと。その推しを育てるというゲームの世界を、フィクションとはいえ、リアリティーのある物語に落とし込んでいて、ワクワクしました。でも、自分が航の立場だったら、絶対イヤですけどね(笑)。僕は頑固なので。
泉美さんとの恋愛については、見どころになるのか……。そりゃあなるか(笑)。いや、今びっくりするぐらい何も意識していないんですよ。というのも、航は愛が枯れている人間で、好きという感情が分からないんですね。本人が自覚できない状態なので、僕自身にも全然生まれてこないというか。
現段階では、泉美さんには純粋に尊敬の目を向けて、必死で頑張っているっていうほうにウエイトを置いて、恋愛の部分はあまり考えてないです。僕は一応最後まで話は聞いていまして、これからの流れを楽しみにしてほしいです」
現在撮影中で、現場は「めちゃくちゃいい雰囲気」だと語る。
「航は残念なことに教養もマナーもないんですが、いざ自分が演じてみたら、台本で読んだ印象以上に『アホだな』という仕上がりになりました(笑)。言葉も常識も知らないし、字もすごく汚いし。
でも憎めないんですよ。本人は本人なりに頑張ってるから。芯の部分は素敵なヤツだし、勉強して必要なものを身につけたら、本当に変わるだろうなって。泉美さんの『私が一人前の男に育てる』っていう気持ちが、僕も少し分かりますね。
比嘉さんはとても信頼できる女優さん。裏表がなくて、お芝居でも一発目からすべてをさらけ出してくださったので、僕も安心してぶつかっていけました。僕と比嘉さんの胸キュンパートは、今のところ意外と少ないんですよ。
もしそれを求めるなら、泉美のビジネスパートナーである副社長役のディーン・フジオカさんにご期待ください(笑)。他のキャストのみなさんも個性が際立っていて、誰もが中心になれる空気感。このいい雰囲気が画面越しにでも伝わればうれしいです」
今年はラブコメに連投
渡邊は昨年の『恋はつづくよどこまでも』、今年4月期の『恋はDeepに』、そしてこの『推しの王子様』と、ここ1年半の間ですでに3本のGP帯恋愛ドラマに出演している。『恋つづ』では、医師の天堂(佐藤健)の姉(香里奈)に恋をする新人看護師、『恋はDeepに』では海洋学者の海音(石原さとみ)の同僚・藍花(今田美桜)と恋人同士になる蓮田三兄弟の末っ子を演じた。"王道ラブコメディ"に携わってきたことは、今回の作品に生かせそうか。
「どうでしょう。『恋つづ』は僕にとって連ドラ2本目の作品で、『ヤッター!』のほうが大きかったからなぁ。自分も恋愛パートはありましたが、僕の役は(上白石)萌音ちゃんと同期ではあるけど診療科が違ったので、健さんとの一緒のシーンもそこまでなくて。
作品の軸となる萌音ちゃんと健さんのド直球ラブ、みたいなのは現場で見られていないんです。作品がちゃんと成立するように、1つの歯車としてしっかりと役をまっとうしようという気持ちが強くて、ギア的にラブを意識する方向ではなかったんですよね。
『恋はDeepに』は、ラブコメを存分に『浴びたな』と感じています。険悪な次男(綾野剛)と長男(大谷亮平)の仲を取り持つ三男の榮太郎は、人懐っこいヤツで。僕自身はあそこまでかわいらしい犬みたいな人間ではないので、今はそのパブリックイメージに悩んでいるところ(笑)。年下の子に恋をして、僕のほうからアプローチをかける役で、その過程が色濃く描かれたわけではないですが、でも本当、楽しかったですね」
綾野剛とは、『MIU404』に続き2回目の共演となった。『推しの王子様』が決まったときは、「僕もうれしいよ、見るからね」と電話をくれたそう。綾野は『恋はDeepに』が始まるとき、「ラブストーリーは1番難しい」と言っていたが。
「剛さんでも難しいんですね。でも、難しいだろうなぁ。剛さんに恋愛ドラマのイメージがないですもんね。だからすごく楽しみでしたよ。どう演じるんだろうって。
実際に、剛さんと石原さんのあの空気感はすごく素敵でしたね。『ラブコメってこうなんだ』というのをいつも感じて。でも作品づくりの裏側を見て、ちょっと『あっ!』ってなっちゃいましたね。見ちゃいけないものを見てる感というか。『やってんな!』というか、うまく言えないけど(笑)。
『推しの王子様』は、ラブ先行の話ではないんですが、剛さんを見て学んだことなど、いろんなところでこれまでの経験は生きてくるんじゃないかと思います」
渡邊自身はラブストーリーは好きなジャンルか。また、これまでに見てきた作品は?
「嫌いじゃないですよ。飢えてるときはたまに見たくなります(笑)。うーん、『プロポーズ大作戦』(07年)かな。ハットを被った妖精役の三上博史さんが好きだったんですよね。『ハレルヤチャンス』とかいう、あのキャッチーさ。あとは『ブザー・ビート』(09年)。山P(山下智久)が好きなんでしょうね。カッコよかったな。あとは高校生のときに見た『ラブシャッフル』(09年)もよく覚えています。
どちらかというと僕らの世代って、『ごくせん』(02年~08年)とか『ROOKIES』(08年、09年)とか、青春群像モノが多かったんですよ。最近はまた恋愛系が増えてきて、自分が相手役を演じられるのは光栄です。『まだ早いよ』ってちょっと思いますが、航と一緒に自分も成長したいです」
1月期『知ってるワイフ』のスタッフが再集結。ベンチャー企業社長の泉美(比嘉愛未)は、自社で手掛けた乙女ゲームのキャラ・ケント様とそっくりな航(渡邊圭祐)と出会う。ところが、航は無作法で無教養。泉美は航を雇い、マナーから生きがいまで、様々なことを教えていく。(木曜22時/フジテレビ系)
(ライター 内藤悦子)
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