日経クロストレンド

携帯性と機能性を両立

これら以外に、8つの商品が機能部門やデザイン部門でそれぞれ「優秀賞」として選出された。

デザインフィル(東京・渋谷)が開発した「XSコンパクトパンチ」は、同社ブランド「ミドリ」で販売する世界最小クラスの2つ穴を開けるパンチ。折り畳むと手のひらに収まるコンパクトサイズで、本体を左右に広げて使うとコピー用紙なら5枚までの穴開けが可能という。

開発前は、パンチを携帯する用途があるだろうかと疑念を持っていたという。しかし同社の営業担当者がA4判の製品カタログをA5判に縮小コピーし、社内の共有パンチで穴を開けてバインダーにとじている姿を見たとき、テレワークによって社内で共用していた文具も今後はパーソナルな持ち物に変化していく、と市場性を確信。世界最小クラスの実現に向け、折り畳み方法の検証や部品の素材選びなど何度も検討を重ね、21年7月に発売した。文具を携帯して使う新しいライフスタイルを広めていきたいという。

デザインフィルが開発した「XSコンパクトパンチ」(写真提供/デザインフィル)

プラス(東京・港)の「ローラーケシポン 箱用オープナー」は、宅配便の段ボールに貼られた宛名ラベルを隠せるスタンプ機能に加え、段ボールの開梱(こん)機能を搭載。開発に際しては、開梱用の刃の部分の切れ味を損なわず、安全性を高めることに苦労したという。

刃の部分を「ギザ刃」にしたり厚くしたりしたほか、使用時に刃をロックする機構も付けた。また、従来のインクでは苦手だった、つるつるした宛名ラベルでも消せるようにインクを新開発した。米国のテレビ通販で20年11月に発売したところ、1分間で約1000個が完売するなど好評だった。そこで21年6月に国内でも発売した。

プラスの「ローラーケシポン 箱用オープナー」。カッターを装備し、段ボールの開梱(こん)ができる。宛名ラベルを隠せるスタンプ機能も搭載している(写真提供/プラス)

ヤマト(東京・中央)の「OUTDOOR TAPE(アウトドアテープ)」は、布製の粘着テープ。手で簡単に切ることができ、油性ペンによる筆記も可能。アウトドアや、防災備品、旅行など多くの市場を見込む。

かさばる要因だった巻き芯を取って平たくしたことで、コンパクトで携帯しやすくなった。ただし芯がないとテープ同士が付着するため、芯の代わりにしたフィルムに貼って巻いている。この工程はずれが生じやすくとても苦労した点で、ずれを解消するため専用治具を用意した。

ヤマトの「OUTDOOR TAPE」。手で簡単に切ることができ、油性ペンで書くこともできる。巻き芯を取って平たくしたことで携帯性を上げた(写真提供/ヤマト)

コクヨの「鉛筆シャープ」は、外観のデザインから使い心地まで、鉛筆のようなシャープペンのシリーズ。11年に小学生向けの「キャンパス ジュニアペンシル」からスタートし、鉛筆シャープのシリーズとして21年5月末で累計出荷数量は900万本。今回の受賞は20年11月に発売した最新版で、原点に立ち戻り軸のツヤツヤ感や六角の形状など“鉛筆のような”商品にこだわった。ペン先は削ったような質感にしている。

コクヨの「鉛筆シャープ」。20年11月に発売した最新版は、原点に戻り六角の形状など鉛筆のようなデザインにこだわった(写真提供/コクヨ)
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