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バウンティ号事件 5本の映画になった嘘のような実話

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ナショナルジオグラフィック日本版

美しい南の島。壮大な船の旅。乗組員による反乱。1787年11月に英国海軍の輸送船バウンティ号がイングランドを出航した時、その後に待ち受ける運命を誰も想像だにしなかっただろう。

今では、事件は「バウンティ号の反乱」として知られるようになり、20世紀だけで5本もの映画が製作された。ありえない物語のように語り継がれているが、この船と乗組員に起こったことは紛れもない事実だ。

タヒチで奴隷の食料を調達せよ

海軍の船とはいえ、バウンティ号の任務はいたって平和的だった。艦長のウィリアム・ブライは、熱帯の果実であるパンノキの実を、南太平洋の島、タヒチで調達するよう命じられた。パンノキの実は安くて栄養価が高いため、西インド諸島の砂糖プランテーションで働く奴隷の食料として運ぶ計画だった。

乗組員46人のうち、2人は植物学者、士官は艦長ひとりだけ。海軍による護衛船もつかず、1隻だけでの航海だったが、ブライは特に心配はしていなかった。タヒチへは、1769年にジェームズ・クックが訪れており、そこはパンノキの実が鈴なりになっている楽園のような場所だと考えられていた。

嵐で荒れる海を旅すること10カ月、5万キロを航海したバウンティ号は、1788年10月にタヒチに到着した。島は噂にたがわず美しく、現地の人々は友好的だった。乗組員は、島の人と物資を交換したり、自宅へ招かれて歓迎を受けたりした。さらに、英国から運ばれてきた貴重な品と引き換えに、女性たちは体を差し出した。

乗組員たちはそれから5カ月間、昼はパンノキの実を集めたりパンノキの世話をしたりし、夜は酒盛りをして、楽園生活を満喫した。ところがその間に、40%もの男たちが性感染症にかかった。それは、何年も前に英国やフランスの航海者がタヒチに持ち込んだものだった。

反乱にいたる経緯

1789年4月、バウンティ号が祖国へ旅立つ準備を整えた時、反乱の種は既にまかれていた。タヒチで夢のような生活に溺れていた乗組員たちの間で規律の乱れが目立ち、厳しいことで知られるブライ艦長はいら立っていた。バウンティ号の専門家で作家のスヴェン・ワールースは、ブライについて「乗組員のあら探しをしたり侮辱したりし、細かいことにうるさく、横柄な態度で、人をおとしめることを楽しんでいたようだった」と書いている。

ブライは特に、航海士のフレッチャー・クリスチャンにつらく当たり、理不尽な罰を与えていた。4月27日、船に隠してあったココナツを盗んだとして、ブライはクリスチャンを責め立て、このことで全乗組員に対して罰を与えた。

反乱の原因については今も歴史家の間で意見が分かれているが、少なくともクリスチャンに関しては、この出来事によって我慢の限界に達したという点で一致している。4月28日、クリスチャン率いる反乱者たちは、銃を取ってブライの船室を襲撃し、艦長を拘束した。そのときクリスチャンは、「あなたの下で、私は何週間も地獄のような生活に耐えてきた」と告げたという。

その後船内は混乱し、乗組員は艦長側につく者と反乱者側につく者とで真っ二つに割れた。反乱者たちは、艦長と18人の乗組員を小舟に乗せ、わずかばかりの食料と、航海用の六分儀を渡して船から追放した。こうしてバウンティ号は、反乱者の手に落ちた。

バウンティ号には、まだ艦長派の乗組員が数人、捕らわれの身となって残されていたが、クリスチャンらはどこか永住できる島を探すことにした。そこで、タヒチから約650キロ南にあるトゥブアイ島へ向かった。島に上陸すると、そこで出会った敵対的な先住民たちを殺害し、労働力と物資を調達するためにタヒチへ戻った。

英国と良好な関係を築いていたタヒチの族長に本当のことを話せば、支援を拒否されると考えたクリスチャンらは、反乱の事実を隠して作り話を聞かせ、30人のタヒチ人労働者を連れてトゥブアイ島へ戻った。だが、先住民との争いは絶えず、乗組員同士の対立も激しくなったため、ここでの定住はあきらめることにした。

乗組員たちはタヒチへ戻ったが、そこで嘘がばれて、さらにクリスチャンに対する新たな反乱計画まで持ち上がる。そこでクリスチャンは、船上の宴会に招待すると言ってタヒチ人たちを誘い出し、船に乗ったところで彼らを捕らえると、そのまま出航した。16人の英国人乗組員が、タヒチに取り残された。

一方ブライとその乗組員もまた、過酷な船旅を強いられた。最初は近くのトフア島に到達したが、敵対的な先住民らに操舵(そうだ)員が殺されたために、島を離れなければならなかった。食料が底をつきかけ、船はオランダの植民地がある約6500キロ離れたティモール島へ向かった。40日以上の航海を経て、ようやく目的地にたどり着いたブライらは、すぐに事件を祖国へ報告した。

反乱のその後

英国に帰還したブライは、船を失った責任を追及されて軍法会議にかけられたが、無罪判決を受けた。その後、反乱者たちを捕らえるためにパンドラ号が英国を発った。1791年3月にタヒチに到着し、クリスチャンに置き去りにされた14人の反乱者を逮捕したものの、そのパンドラ号がグレート・バリア・リーフで沈没し、かせをかけられていた4人が死亡した。

1792年9月、10人の生存者が英国へ連れ帰られ、軍法会議にかけられた。英国の法律では、船に残った者は反乱に積極的に関与したかどうかにかかわらず有罪とされていたが、裁判では4人が無罪となり、6人は絞首刑を宣告された。そのうち3人は最終的に恩赦を受けたが、残りのトーマス・バーケット、ジョン・ミルワード、トーマス・エリソンは、1794年10月29日に刑が執行された。

 その頃、クリスチャンとともに船出した反乱者と捕らわれたタヒチ人たちは、南太平洋に浮かぶ絶海の孤島に安全な住みかを見いだしていた。緑豊かな無人のピトケアン島は、まさに楽園のような島だった。到着して間もなく、反乱者たちはバウンティ号に火をつけて燃やし、この地に定住することを決めた。

だが、船のなかでくすぶっていた対立の火種は、島に上陸した後も消えることはなかった。強制的に連れてこられたタヒチ人たちは、乗組員が女性を性的な所有物のように扱っていたことに怒りを募らせていた。なかには、あまりにひどい扱いを受けて自殺してしまった女性もいた。1793年9月、ついにクリスチャンを含む4人が、タヒチ人に殺害される。それから10年の間に残りの反乱者たちも次々に命を落とし、最後に残ったのは、ジョン・アダムスただひとりだった。

その後、アダムスらの子孫はより生産的な土地や物資を求めて何度か島を離れたり戻ったりしたが、今も50人ほどがピトケアン島に暮らしている。現在、島は英国の海外領土になっている。1957年には、ナショナル ジオグラフィックのエクスプローラー(協会が支援する研究者)のルイス・マーデン氏が、島の東海岸でバウンティ号の残骸を発見した。

バウンティ号の物語は、冒険やドラマとしての要素とともに、英国による植民地支配の歴史の暗い側面として、今も語り継がれている。歴史家のダイアナ・プレストン氏は2017年に、ナショナル ジオグラフィックに対して、こう語っている。病やキリスト教宣教師の到来、現地女性に対する性的な搾取によって、「ヨーロッパの航海家たちは、タヒチの文化のエキゾチックで美しい部分をすべて破壊してしまいました」

(文 ERIN BLAKEMORE、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 日本版サイト 2021年8月16日付]

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