検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

土星の中心にスープ状の巨大コア 質量は地球17個分

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

土星の内部にあるコア(核)は、直径の60%を占める巨大なものであること、また、氷と岩石とガスが混ざり合った奇妙なスープ状の塊であるらしいことが、最新の研究でわかった。土星の環から解き明かしたこの研究成果は、2021年8月16日付で天文学の専門誌「ネイチャー・アストロノミー」に発表された。

「巨大なコアです。私たちが予想していたものとはまったく違っていました」と、論文の著者の1人である米カリフォルニア工科大学のクリス・マンコビック氏は語る。

この意外な研究成果は、土星が形成された仕組みや、磁場が生まれる仕組みについても、科学者たちに再考を迫ることになる。「土星のコアが複雑であることはある程度予想していましたが、それ以上に複雑でした」と、米ジョンズ・ホプキンズ大学のサビーン・スタンリー氏は言う。なお、氏は今回の研究には参加していない。

土星の内部を詳細に調べるために科学者たちが目を向けたのは土星の環だった。土星の環はまるで地震計のように、この惑星の内部の挙動を記録しているからだ。土星の環を分析した研究チームは、土星のコアの質量が地球17個分であることや、事前の予想とは違い、岩石や鉄からできたコンパクトな塊ではないことを明らかにした。

「惑星の最深部について何かを知るのは非常に困難です。土星のような巨大惑星では特にそうです」とスタンリー氏。「新たな情報のすべてが既存の知識を修正してくれます」

科学者たちは今後、これほど大きくてごちゃごちゃしたコアをもつ巨大惑星が成長してきた過程を解明しなければならない。新たな悩みの種だ。

土星の内部への入り口

土星の最大の特徴はその環にある。環は遠くからは円板のように見えるが、実際には無数の氷の塊でできており、家ほどの大きさの塊もあれば、小石ほどの大きさの塊もある。氷の塊は、土星やその衛星との重力相互作用によって押されたり、引っぱられたり、変形させられたりする。

そうしてできる環の「さざ波」は、土星の内部構造の記録でもある。科学者は通常、惑星の内部を探るのに重力場の変動を利用するが、この方法では土星のような巨大ガス惑星の内部をのぞき込むことができない。その代わりとなるのが環なのである。

1990年代初頭、惑星科学者のマーク・マーリー氏は、土星内部の物質の動きによって、土星に近いところにある暗くて幅の広いC環に波紋が生じ、それを観測できるのではないかと考えた。土星の心臓が鼓動し、内臓が動き、全体が脈動する。その振動が環の粒子と相互作用し、C環に「スパイラル密度波」と呼ばれる波紋を形成するのだ。

マーリー氏のアイデアは「100%正しいことがわかりました」とマンコビック氏は言う。しかし、彼の予想を裏付けるためには、20年以上の歳月と数十億ドル(数千億円)規模の宇宙探査が必要だった。

13年、米航空宇宙局(NASA)の土星探査機カッシーニのデータを調べていた科学者たちは、環の中に初めて地震の痕跡を見つけ、それを利用して土星の内部をのぞいてみた。研究チームは、この新しい研究分野を「土星地震学(kronoseismology)」と呼び、観測された波紋のほとんどを土星内部の動きと関連付けた。19年には、この手法を用いて、土星が10時間33分で1回転していることも突き止めた。

現在は米アリゾナ大学に在籍し、今回の論文の査読を担当したマーリー氏は、「長い歳月を経て、土星の環の波が実在することがついに確認されました。私たちが予想したような波が20個以上見つかりました」と言い、「せっかちな人にはお勧めできない研究分野です」と笑う。

しかし、マーリー氏が予測しなかった不思議な波が少なくとも1つあり、マンコビック氏と同じくカリフォルニア工科大学のジム・フラー氏は、この波を利用して土星の内部を探った。

「彼らは、土星のコアが徐々に変化してゆく不明瞭なものである場合にのみ、この特殊な波と、それ以外のすべての波を説明できることを、非常に説得力のある形で示しました」とマーリー氏は言う。「この波は惑星深部の状態に非常に敏感なのです」

土星の巨大なコア

マンコビック氏とフラー氏は、土星の環の波紋を利用して、土星の中でコアが大きな部分を占めていることを明らかにした。土星のコアは岩石と鉄の塊だろうと予想されていたが、今回の分析により、水素とヘリウムと氷と岩石が混ざった、輪郭の不明瞭なスープのようなものであることがわかった。土星を真っ二つに割っても、玉ねぎやあめ玉や地球のようなはっきりした層状構造は見られない。コアの境界は曖昧で、中心に近づくほど物質の濃度が高くなっていく。

マンコビック氏は、自分たちが導き出した土星の描像があまりにも奇妙だったため、環の波紋を別の方法で説明しようと試みたこともあったという。「この描像を否定するため、できるかぎりのことをしました」と彼は言う。

しかし、彼らが導き出した土星のコアのモデルは、科学者たちが土星から収集した大量の重力データときれいに一致していた。また、木星のコアが同様の低密度の混合物である可能性を示したNASAの木星探査機ジュノーの観測結果にもよく似ていた。

残る謎

巨大ガス惑星は、物質の小さな塊から始まり、これがどんどん大きくなって、原始惑星の重力が近くのガスをすべて引きつけることで誕生するとされている。しかし、そのようなシナリオでマンコビック氏とフラー氏が観測したようなコアを作れるかどうかは不明だ。

土星の中心部は45億年の進化の過程で変化した可能性がある。気体の水素が徐々に液体の金属状態へと変化したり、その他の未知のプロセスによって変化したりしたのかもしれないが、「何があったのかはまだわかりません」とマンコビック氏は言う。

もう1つの意外な点は、マンコビック氏とフラー氏が、土星のコアには対流がないと推定していることである。これが本当なら、土星を赤外線で観測したときに驚くほど明るく見える理由を説明できるかもしれない。マーリー氏は、「木星の明るさは、形成から45億年後として理論的に予想されるとおりの明るさなのですが、土星は明るすぎるのです」と言う。「コアに対流がなければ、土星が冷えるペースが遅くなり、予想よりも明るくなります」

しかし、コアが対流していないと、土星の磁場を理解するのが困難になる。通常、惑星の磁場は、内部で対流が起こることによって生成すると説明されている(ダイナモ理論)。しかし、今回の研究では、コアで対流が起こらないことになる。コアの内部か、コアのすぐ外側で、液体の金属水素の薄い層が回転していることも考えられるが、そうだとしても、土星の磁場の対称性を説明するのは難しい。

土星をめぐる疑問を解決するためには、土星探査機カッシーニが収集した膨大な情報を精査し、スーパーコンピューターを使って惑星内部の詳細なシミュレーションを行い、地球上の望遠鏡を駆使して実験を行う必要がある。将来的には、天王星や海王星などの環を精査し、氷の粒子に書き込まれた秘密を解明するのにも、同じ手法が使われるようになるかもしれない。

マーリー氏は言う。「天王星や海王星の環にも謎があるので、同じようなことが起きていないか調べているところです」

(文 NADIA DRAKE、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年8月20日付]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_