道の駅で「マリオット」に泊まる 全国1000室のお得度
クルマで近場を旅するマイクロツーリズムの受け皿として、近年急激な進化を見せている道の駅。道の駅を旅の目的地にした場合、食事や買い物の後にホテルまで行くのが面倒に感じるケースもある。そこに目を付けた、世界最大のホテルチェーンであるマリオット・インターナショナルが、道の駅へのホテル併設を進めている。それが「フェアフィールド・バイ・マリオット 道の駅プロジェクト」だ。
マリオット・インターナショナルの「フェアフィールド・バイ・マリオット 道の駅プロジェクト」では、2020年10月に岐阜県の「フェアフィールド・バイ・マリオット・岐阜美濃」「同・岐阜清流里山公園」から始まり、現在は14カ所の道の駅にホテルを併設し、計1000室以上が利用できる。
このプロジェクトは、積水ハウスとマリオット・インターナショナルが各自治体と連携して、道の駅をハブにした「地域の魅力を渡り歩く旅」を提案する事業として始まった。最大の特徴は、施設内にレストランがない宿泊特化型ホテルということ。また、中の浴室には基本的にシャワーしかない。食事などは道の駅を利用し、疲れたらホテルでくつろぐというスタイルを提案する。
長期滞在するよりは、1泊したら次の道の駅に向かって出発し、数泊で様々なエリアを体験する旅を想定している。20年から始まった第1弾の展開で、中部地方と近畿地方、栃木県に集中してホテルを開業しているのはこのような理由によるものだ。
外資系ホテルであるマリオットがこの事業に興味を持つのは、インバウンド(訪日外国人)の旅行先が変化しているから。最初は大都市の有名観光地を訪れるが、何度も日本に来ているリピーターは大都市以外の地方を旅する傾向がある。国際的に通用するマリオットブランドならば、コロナ禍後はそうしたインバウンドの新規需要を獲得できるのではないかというわけだ。
21年6月開業の「和歌山すさみ」が、海を見ながら入れる温浴施設を併設して、宿泊客以外の利用も可能にするなど、新たな取り組みを始めたホテルもある。25年までに25道府県で計約3000室まで拡大する計画だ。
格安ではないが室内は快適
今回日経トレンディの記者は、京都府南山城村にある道の駅「お茶の京都みなみやましろ村」の取材の際に「フェアフィールド・バイ・マリオット・京都みなみやましろ」で1泊した。
予約時は、事前に会員サービス「マリオット ボンヴォイ」(年会費無料)に登録すれば会員価格で予約できる。21年7月上旬に宿泊時の料金は、会員価格の平日素泊まりで、大人1人約1万円、休日は1万2000円程度。格安とまでは言えないが、客室の品質を体験すれば納得できる価格設定だった。
客室はコンパクトではあるが洗練されたデザインで、間仕切りを収納式にすることで開放感を出している。49型の薄型テレビがあり、無料のWi-FiにUSB充電の差し込み口も複数あるなど、設備面も申し分なかった。
寝心地の良いベッドで熟睡した翌朝は、窓の向こうに南山城村の美しい茶畑を見渡せた。朝食は平日8時から営業している道の駅のレストランで、地産食材を使ったメニューを600円(税込み)で食べられた。夕方以降に到着する場合は、事前に夕食の調達を忘れないよう注意が必要だ。朝食をホテルで食べたい場合は、あらかじめ朝食ボックスを注文しておくこともできる。
【1】室内は25平方メートルとコンパクトで簡素
【2】朝食ボックスに地域の個性
【3】地元情報が得られる資料スペースも
(編集者・ライター 梅津朋子、日経トレンディ 大橋源一郎、写真提供 マリオット・インターナショナル)
[日経トレンディ2021年9月号の記事を再構]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。