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くらし&ハウス
デンシバ Spotlight

2021/8/29

デンシバ Spotlight

――不正を起こす企業では、長期にわたって同じ業務を担当する従業員がいるといった問題も目立ちます。

「特定の業務を同一人物が担当し続けることには良い面と悪い面がある。問題は属人的に行われている業務に対するチェックが適切に行われないことだ。定期的に人事異動を実施し、仲間内のなれ合いを排することが必要だ。これが不正をあぶり出したり、不正行為を抑止したりする効果を発揮する」

「しかし、人事が固定化しやすい工場では、閉鎖的な人間関係を背景として、組織を守るためにあえて不都合な真実を上司に報告しなかったり、不正行為を内部通報しても会社に取り合ってもらえないと萎縮して積極的に情報を報告しなかったりする可能性がある。この『情報の目詰まり』を防ぐためには、本社の人間や役員が出向いて現場とコミュニケーションを取るなど、通常の職階を飛び越えて接触機会を増やし、現場の情報を吸い上げることも有効だ」

――仕方がない、やむを得ないといった「誤った正当化」が現場にはびこるのは、長い経済低迷により製造現場が疲弊している影響もあるのでしょうか。

「日本の製造業は今でも自社製品の品質に自信を持っているが、伝統や歴史のある古い工場ほど設備の老朽化が進み、工程能力が低下している。最新の機械が投入されず、担当者が徒手空拳で戦っている現場もある。そこに厳しい納期や売り上げ、コスト低減のプレッシャーがかかれば不正が発生しやすくなる」

「日本企業にはまだ『売り上げ至上主義』が残っているようだ。こうした考えは往々にして、達成困難な納期、守れない価格・仕様など自社の実力やキャパシティーを超えた受注につながりがち。それが品質・データ偽装の温床になる。問題は、そのような過程で検査部門や品質保証部門の意見が通りづらいことだ。検査部門・品質保証部門の独立性を高め、達成困難な受注を防ぐことが大事だ」

「また、ビジネスをする以上、現場に無理を強いるような契約条件を見直して『儲(もう)かるビジネス』に転換することが、巡り巡って品質保証につながる。受注する以上は、適正利潤を確保できるような受注に絞るべきだ。また、付加価値が低い製品を日本で作り続けるのはリスクであり事業のポートフォリオを見直さなければならない」

「経営者は、品質・データ偽装を製造現場だけの問題にとどめず、会社全体の問題として受け止めるべきだ」

(木ノ内敏久)

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