「通話料半額」がMVNOの新たな武器に
こうした携帯大手の動きを受けて、小容量・低価格の料金プランを得意としていたMVNOも対抗策を打ち出している。その一つはエイチ・アイ・エス子会社のHISモバイル(東京・港)が6月28日に開始した新料金プラン「格安ステップ」である。
格安ステップは音声通話付きのプランであれば、月当たりの通信量が1GBのプランで月額590円、3GBのプランで790円と非常に安価に利用できる。10GBのプランでも月額料金は1790円で、いずれのプランも1GB当たり275円で通信量の追加が可能だ。

格安ステップはデータ通信だけでなく、音声通話も安価に利用できる。国内音声通話料金は30秒当たり11円とUQ mobileやLINEMOなどのサービス(30秒当たり22円)の半額。専用アプリを使う必要もなく、スマートフォン標準の通話アプリで通話できる。

HISモバイルのように音声通話料を下げるMVNOはほかにもある。MVNOサービス「イオンモバイル」を提供するイオンリテールは8月12日、音声通話付きプランを10月1日から一律で月額220円値下げすると発表した。同じく10月1日から専用アプリを使わなくても国内通話が30秒11円で利用できる仕組みを提供する。

イオンモバイルは21年11月をめどに、月額1650円で音声通話がし放題になる「イオンでんわフルかけ放題」を提供することを表明している。ほかにもソニー子会社のソニーネットワークコミュニケーションズはMVNOサービス「nuroモバイル」で、21年内に専用アプリを使うことなく30秒11円の音声通話ができるサービスを提供すると発表している。これまで音声通話サービスがあまり充実していなかったMVNOが、この分野を急速に強化しているのは興味深い。
音声通話を「あまりしない」という人は確かに増えている。一方で「全くしない」という人もほとんどいない。にもかかわらず、携帯電話の音声通話料は「30秒22円」で高止まりしていた。通話定額サービスが必要なほどではないが、そこそこ音声通話をする人には、これらMVNOのサービスも選択肢の一つとなるだろう。
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。