スーツ購入 オーダーより店での出合いから
――そのほかに好みのスーツはありますか。
「イタリアのラルディーニが好きですね。パッドや芯地がない柔らかなものが多く、首や肩にきれいにフィットします。ブランドによって袖の付き方は異なり、着心地や見た目がずいぶん変わりますが、僕の体形にはラルディーニがすごく合うなあと思って、スーツはラルディーニが多いですね。オーダーでスーツを作ることもありますが仕上がりのイメージが湧きにくい。お店に飾ってあるのを見て、これいいな、と感じて試す買い方が好きです。今は新型コロナ感染拡大で外出が難しいですが、早くそうした買い物体験ができる環境に戻ってほしいです」
――店頭での商品との出合いや接客がファンを作ります。フェイラーの商品の充実ぶりにも驚かされます。
「日本に上陸して来年で50年になりますが、昔からのお客様のイメージは黒地に花柄。より多くの人に知ってもらいたいと、動物やフルーツ、香水瓶などへとモチーフを広げ、最近ではお相撲さんや覆面レスラーが並んでいるポップな柄も取り入れています。キャラクターとのコラボにも取り組んでいて、ドラえもん柄などはネットで販売を始めると30分で売り切れます。最近では男性ものも多くなり、男性のお客様が自分用のハンカチを買いにくることも増えています」
――ドイツのブランドでありながら、商品企画は日本発というのが面白いです。
「海外ブランドを日本主導で企画するところはそれほどないのですが、フェイラーの生産体制というのは実にドイツ的です。ぷくぷくしたハンカチの素材はシュニール織という伝統工芸の織物なのですが、それを機械化するにあたり、織機まで自分たちで開発しました。ドイツの自動車産業で数多くの技術革新がなされたように、フェイラーの仕事も技術による革新が進んでいます。それをドイツのフランクフルトから4時間もかかる、人口1400人ほどの小さな田舎の村でやっているんです。村人は何かしらフェイラーに携わっていて、そこで作られたハンカチが日本で大ヒットしている。まるでおとぎ話みたいです」
――若い頃は服に興味がなかった川部さんの装いに革新が起こったきっかけは何だったのですか。
「2008年にセレクトショップのバーニーズジャパンに出向したことがすべて。そこでファッションの見方、装いの価値観が大きく変わりました」
(聞き手はMen's Fashion編集長 松本和佳)
SUITS OF THE YEAR 2022
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