当時は地元の私立小学校に通っていた。系列には中高の進学校もある。しかし、ロボット開発をやりたかった立崎さんは渋幕を志望した。「渋幕の物理部では、ロボットの設計から製作まで一貫してやっていた。キットを使う学校は他にあったが、独自に設計していたのは渋幕だけだった」という。中学受験では東大合格ナンバーワンの女子進学校として知られる桜蔭中学・高校(東京・文京)にも合格した。千葉市の渋幕には通学だけで片道90分程度はかかる。祖母から桜蔭を薦められ、期限ぎりぎりまで悩んだが、第1志望は譲らなかった。
渋幕はダイバーシティな空間だった。「入学初日から頭上をネーティブの英語が飛び交っていた。ものの考え方やランチのスタイルが違い、自立していてユニークな生徒が集まっていた」。グローバル人材育成を目指す渋幕は多くの帰国子女を受け入れている。希望通り物理部に入部してロボット製作に取り組む一方で、海外志向も高まった。
目標はMIT 宇宙でロボコン開催

立崎さんは、「やはりロボティクスが進んでいるのは米国。マサチューセッツ工科大学(MIT)やカリフォルニア工科大学など米国の工学系大学に進学したい」と語る。MITには物理部の先輩が今秋に入学する。世界の理系トップ大学に合格するのは至難の業だが、ロールモデルがすぐ近くにいたわけだ。
孫財団に応募したのも、サクラ・テンペスタの創設メンバーの中嶋花音さんが孫財団の3期生となり、米国の大学に進学したからだ。高額な学費や生活費がかかるが、孫財団は全面的に支援する体制を整えているため、お金の心配はない。ただ、「私は帰国子女ではないので、もっと英語の勉強をしないといけない」という。
将来の目標はただのロボットのエンジニアではない。「テクノロジーを通じて社会を変えるリーダーになりたい。宇宙で開催するロボットコンテストを立ち上げ、子どもたちがワクワクするような社会をつくれれば」と熱く夢を語る。孫さんを驚かせた女子高生は世界を変えるリーダーになれるのか。人間力と行動力にあふれ、無限の可能性を秘めていることは言うまでもない。
(代慶達也)