ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長が資金を供出し、優秀な若者の研究活動などを支援する財団法人、孫正義育英財団(孫財団)。8月5日に5期生31人のウエルカムイベントがオンライン上で開催されたが、その代表プレゼンテーションの中で孫さんを思わず唸(うな)らせた女子高生がいた。千葉市の渋谷教育学園幕張高校(渋幕)2年生の立崎乃衣さんだ。ロボット開発に情熱を注ぐ未来人材の素顔に迫った。
コロナ禍でフェースシールドを自ら製作・寄贈
「ほぉ、すごいね」
普段あんまり人をほめない孫さんが、立崎さんのプレゼンに何度も賛辞を贈った。このイベントにはノーベル生理学・医学賞受賞者の山中伸弥・京都大学教授や将棋の羽生善治九段、東京大学の五神真・前総長らが出席したが、いずれの面々も立崎さんのプレゼンに感心しきりだった。

この5期生の約6割は外国籍を有する。世界中の約530人の応募者から選び抜かれ、10代の頃から国際的な学術面の賞をとった逸材もいる。立崎さんの何が評価されたのか。
2020年春、新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、立崎さんは医療・介護施設向けにフェースシールドを自ら設計・製作し、寄贈を開始した。「医療物資が足りていない。本来はどの程度のニーズがあるか調査して、計画を立て対応すべきかと思ったが、それでは遅い。まず自分自身で動こう」と4月初旬には自宅の3Dプリンターで試作モデルを製作し、地元のクリニックに送った。
ただ、自己満足のために製作したのではない。医療関係の使い手の側から何度も意見を聞いて、最適なフェースシールドのために「カイゼン」を繰り返した。うまくフィットする丈夫なフレームはどう作ればいいのか、課題が山積していた。さらに1人では限界があるため、新たにメンバーを募って製作・配送体制も整えた。これまでに2000個以上のフェースシールドを全国に無償で届けた。