アイス、新ブランドなぜ育たない 定番が圧倒的強さ

梅雨明けした途端、やけに暑い。「暑いですねぇ」「いや、本当に暑いですねぇ」。こんなやり取りが挨拶代わりになっている。そもそも今年はエルニーニョの影響で冷夏になるのではなかったか? と思ったら、冷夏予報はいつの間にか取り消されていた。暑い夏の風物詩といえばアイスクリームである。誰もが幼い頃から親しんできたこのアイテム、実はなかなか複雑だ。

アイスクリームのメーカー出荷額は13年度、過去最高を記録した(東京都世田谷区のスーパー)

「スーパーカップ」はアイスクリームではない?

アイス売り場に並ぶ商品は厳密には4種類に分かれ、パックの「種類別」の欄に明記してある。分類の基準は乳成分。正真正銘の「アイスクリーム」は乳脂肪分を8%以上、タンパク質、乳糖など乳脂肪以外も合わせた乳成分を15%以上含むのが条件だ。「ハーゲンダッツ」を筆頭に、高級路線の商品が多い。

乳脂肪分3%以上、乳成分10%以上は「アイスミルク」で「チョコモナカジャンボ」(森永製菓)などが入る。乳脂肪分は問わず、乳成分3%以上だと「ラクトアイス」になり、以上の3種類に当てはまらないアイスキャンディーやかき氷は「氷菓」に分類される。

カップアイスの雄「エッセルスーパーカップ」(明治)は乳脂肪分を含まないラクトアイス。4種類の総称として使われる「広義のアイスクリーム」ではあるが、厳密な種類別ではアイスクリームではない。乳脂肪分が少ない分、原料コストが抑えられ、手ごろな値段設定ができる。こうした分類は国によって違うが、日本はかなり細かいようだ。

賞味期限ないアイス、売れ残り廃棄の心配無用

食品衛生法に基づくアイスクリームの種類
名称条  件商 品 名
アイスクリーム乳成分15%以上、うち乳脂肪分8%以上ハーゲンダッツミニカップ
アイスミルク乳成分10%以上、うち乳脂肪分3%以上チョコモナカジャンボ(森永製菓)
ラクトアイス乳成分3%以上エッセルスーパーカップ(明治)
氷菓上記以外の物ガリガリ君(赤城乳業)、あずきバー(井村屋)

日本アイスクリーム協会(東京・千代田)の集計によると2013年度のアイスクリームのメーカー出荷額は猛暑もあって4330億円と過去最高を更新した。アイスの出荷額は1994年度の4296億円をピークに03年度には3322億円まで減り、再び上昇に転じた。アイスクリームの業界誌を発行するアイスクリームプレス(東京・豊島)の二村英彰社長は「アイスの盛衰は流通の変遷と密接に絡んでいる」と話す。

1990年代ごろまで、アイスを買うのはもっぱら駄菓子屋だった。アイスはマイナス18℃以下で保管すれば細菌が増えないので賞味期限がない。「売れ残りによる廃棄の心配がなく、駄菓子屋にとっても扱いやすい商品だった」(二村社長)。

1977年生まれの筆者は夏休みになると、おやつの時間には小銭を握りしめて近所の駄菓子屋に向かい、赤城乳業の白ミツのかき氷を買ったものである。1987年生まれの同僚M君にとっても、アイスクリームとは「駄菓子屋のゴミ箱をあさって当たりクジを探したブラックモンブラン(主に九州で人気)」だという。「店のおばさんに『アイスのショーケースは3秒以内に閉めるんだよ!』と口うるさく言われたもんです」と彼は遠い目で述懐する。「1個1000円のアイスでもおいしければ迷わず買う」と言い切る40代の先輩記者も「アイスの原体験は駄菓子屋のスイカバー」という。

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