9割の市販薬がネット購入可能に、偽薬局にご用心
改正薬事法で薬のネット通販ルールが変更
「今回の法改正で99.8%の市販薬が購入できるようになった。ただ、市販薬でも重い副作用が出ることがあり、消費者の自己責任が増したのは間違いない。薬を選ぶ際に事前に薬の添付文書を熟読し、効果と副作用、普段使っている薬と併用しても問題ないかを必ず確認してから購入を」と東京薬科大学薬学部の渡辺謹三教授は強調する。
法改正の発端は2013年1月、全ての市販薬のネット販売を求めた行政訴訟でケンコーコムらネット販売業者の勝訴が確定したこと。従来は副作用などの心配が少ない「第3類医薬品」しか通販できなかったが、勝訴以降は事実上、全面解禁されていた。
今回の改正では新たに要指導医薬品が指定。この20品目は店頭で薬剤師の説明を理解したうえで、使う本人しか購入できない。
●スイッチ直後品(15品目)
・ストナリニ・ガード、アレジオン10、アレグラFXなど(アレルギー用薬)
・エルペインコーワ(生理痛用薬)
・アンチスタックス(むくみ等改善薬)
・ナロンメディカル(解熱鎮痛薬)
・エパデールT、エパアルテ(中性脂肪異常改善薬)
・近日発売予定の月経前症候群治療薬や膣カンジダ用薬、アレルギー用薬など
●劇薬(5品目)
・エフゲン(殺菌消毒薬)
・ガラナポーン、ハンビロンなど(勃起障害等改善薬)
ネット販売禁止の要指導医薬品(6月12日現在20品目)は、販売記録を残すなどルールが厳格化された。
「また、ネットで第1類医薬品を買う際は、性別、年齢、症状、医療機関受診の有無などを入力し、薬剤師がメールで使用者の状態に応じた個別の情報提供をし、購入者がそれを理解した旨を連絡して初めて購入できる。最低でも一往復半のやり取りが必要で、症状や持病によっては受診を勧められ、薬が購入できないことも。副作用を避けるには、正直な情報を伝え、薬剤師からの返信もきちんと読んで」と渡辺教授。
やり取りに時間がかかるのが難点だが、ケンコーコムが24時間チャットなどを使ってリアルタイムで薬剤師とやり取りができる「薬剤師LIVE」を5月末から開始するなど、ネット業者も対策に余念がない。アマゾンなど当日受け取りが可能なネット薬局もある。
心配なのは偽薬局サイト、偽薬を販売するサイトの存在。厚生労働省もパトロールを強化しているが、4月からの2カ月間で35の未承認薬販売サイトや偽薬局サイトが見つかっている。
「購入前に、医薬品販売業者として許可を受けている薬局のサイトか必ず確認を。その店で買った薬でなくても薬剤師には相談に応じる義務があるので、処方薬も市販薬も扱う"リアル薬局"をかかりつけにすると疑問点も相談できて安心」と渡辺教授。
1.医薬品販売業許可を受けているネット薬局か確認
厚生労働省の「一般用医薬品の販売一覧」サイトをチェック
2.購入前に添付文書を熟読する
添付文書が読めるサイト(PMDA:医薬品医療機器総合機構)が便利
3.市販薬でも副作用や持病薬とののみ合わせが悪い場合があると知っておく
4.相談用の連絡先や勤務中の薬剤師名の記載も要チェック
5.医薬品の写真、使用期限も確認して購入を
6.ネットで買った薬の疑問点も、地元の薬局で相談OK
6つの心得を常にチェック。ネットでの薬の販売を都道府県に届け出た薬局は5月末現在1048軒。店舗での営業が週に30時間以上などの条件をクリアした薬局のみネット販売を許可される。
この人に聞きました
東京薬科大学薬学部一般用医薬品学教室、教授。1980年東京薬科大学大学院薬学研究科博士課程修了。薬局での実務経験を生かし、一般用医薬品を研究。「ネットでの購入は信頼できるサイトを選んで慎重に」
(ライター 福島安紀)
[日経ヘルス2014年8月号の記事を基に再構成]
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