医療保険は必要? 健保組合の負担支援制度をまず確認
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A. まずは、「高額療養費制度」と、加入する健保組合の「付加給付制度」を確認して
トクニャン(以下、トク) お得情報好きなネコ、トクニャンだニャ。トクニャンの友達が最近、手術して入院したんだニャ。医療保険に入っていなくて心配していたんだけど、退院後に健康保険組合(健保組合)からお金が戻ってきたんだって! どういう仕組みなのか、ファイナンシャルプランナー(FP)の深田晶恵さんに、詳しく聞いてみるニャよ~。
深田(以下、深) トクニャンが知りたいのは、健康保険の「高額療養費制度」ですね。1カ月の医療費は自己負担の上限額が決まっていて、それを超えた金額について、国民健康保険(国保)や加入している健保組合から払い戻しされるシステムです(*)。
*入院中の食事負担や差額ベッド代などは含まない
トク へえ~、1カ月の自己負担の上限額ってどれくらいニャ?
深 年齢や所得によって違いますが、年収370万円以下の場合、上限額は5万7600円。年収370万~770万円の場合は、「8万100円+(かかった医療費の総額-26万7000円)×1%」という式で計算します。例えば、手術・入院で100万円の医療費がかかったとしましょう。窓口で支払うのは、その3割の30万円。年収400万円の人のケースで計算すると、1カ月の自己負担上限額は8万7430円。30万円を窓口で支払えば、差額の約21万円が、後日戻ってくる仕組み。入院などがあらかじめ分かっているなら「限度額適用認定証」を準備しておくと便利。医療機関の窓口で支払う医療費が自己負担限度額までとなり、一時的な出費も抑えられますよ。
トク ふーん、入院したとしても、10万円くらい用意しておけば大丈夫そうなんだニャ。ちなみに友人は、「戻ってきたお金が想像していたよりも多かった」と言っていたんだけど……。
深 それは多分、「付加給付」だと思いますよ。
組合によっては独自の「付加給付」があることも
トク 付加給付ってなんだニャ?
深 それぞれの健保組合が、設定した自己負担限度額以上の部分を、独自に上乗せしてくれる医療費サポート制度のこと。健保組合により給付の水準は異なります。例えば商社や金融機関、マスコミなどは収入にかかわらず、1カ月の自己負担限度額を2万円、電機・自動車メーカーは2万~3万円、流通系は5万円といった上限額の設定が多いですね。公務員が加入する共済組合や、私立高校・大学勤務の人が加入する私学共済の場合、所得に応じて2万5000円または5万円が限度額です。
トク 付加給付があるかどうかは、どうしたら分かるのかニャ?
深 トクニャンは、自分が加入している健保組合のホームページを見たことがありますか?
トク そういえば、ないニャ!
深 まずは、健保組合のサイトで「医療費が高額になったとき」のページを開いてみて。「高額療養費制度」の表の下に、「一部負担還元金」や「付加給付」として記載されています。ベンチャー・中小企業が加入する健保組合でも、付加給付制度を持っている可能性があるので、ぜひ一度、加入する健保組合のサイトでチェックしてみましょう。
トク 高額療養費や付加給付の制度があれば、民間の医療保険は必要ない気がしてきたニャ~。
深 そもそも民間の保険は、公的な制度や貯蓄ではカバーできないリスクに対して備えるもの。雇用が安定している正社員や公務員、共働きなどの場合は、民間保険に頼らなくても大丈夫。一方、シングルで貯蓄がほとんどない場合や、長期入院すると収入が激減するフリーランスや派遣社員などは、入院による経済的リスクが高いと言えます。一定以上の貯蓄がなければ、「保険料が安い掛け捨ての医療保険」で備えておくと安心かもしれません。
この人に聞きました
ファイナンシャルプランナー。独立系FPとして、利用者目線でのマネー情報を発信している。『知識ゼロの私でも! 日本一わかりやすい お金の教科書』(講談社)など著書多数。
(取材・文 澤田聡子、イラスト おおの麻里)
[日経ウーマン 2021年8月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。