ポイント2:株価のピークを伝えた「靴磨きの少年」と「ホームレス」

世界大恐慌の時代には、狂乱相場に翻弄されて自死を選んだ投資家すらいました。一方で、混乱に乗じるかのうように大もうけした強者もいました。何が違ったのでしょうか?

ジョセフ・P・ケネディとバーナード・M・バルークに、注目してみましょう。ケネディは、米国の第35第大統領ジョン・F・ケネディのお父さんです。バルークは投資家から政界に転身して、第32代大統領フランクリン・D・ルーズベルトをはじめ、歴代大統領の政策に深く関わった人物です。

この2人は「暗黒の木曜日」の前に、保有していた株を売り抜けていました。「暗黒の木曜日」に至るまで、アメリカの株式市場はバブル状態にありました。その間に2人とも、かなりの資産を築き上げていたのですが、その資産を守り抜いたわけです。そればかりかケネディは株価暴落の過程で空売りを仕掛け、大もうけしたといわれています。

2人がどうやって株価暴落のタイミングを予知したのかというと、基本的には実体経済の分析を通じてであったようです。特にバルークは統計情報を重視し、自動車販売と住宅着工の落ち込みを示すデータから、景気後退と株価下落を予想したそうです。

さらに「ダメ押し」といえる事件もありました。

1929年の夏、ケネディが靴磨きの少年に靴を磨いてもらおうとしたときのこと。少年は米紙ウィール・ストリート・ジャーナルを読んでいて、株取引に夢中でした。ケネディに対して自慢げに、推奨銘柄を教えたりなどします。この少年との出会いで、ケネディは相場撤退を決意したと伝えられています。

バルークにも、似たようなエピソードが残っています。この時期に、自宅近くでホームレスのような老人に呼び止められて、「いいネタがあるけどどうかね?」と、耳元でささやかれたというのです。株の購入を薦められたというわけです。バルークもこの老人との出会いで、相場がこれ以上、上がることはないと確信したと伝えられています。

これらのエピソードにおける靴磨きの少年やホームレスは、いわば「株の素人」の象徴です。素人が前のめりに株式市場に参入して、盛んに株を買っているということは「買い需要は出尽くした」ことの表れであると、2人は判断しました。だから、この後は売り材料しかなく、株価は早晩、暴落するというわけです。

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ポイント3:大失敗の悔しさが「バリュー投資」のイノ
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