
お次は湯けむりの街、大分県の別府に2021年7月オープンした星野リゾートの「界 別府」。JR別府駅から徒歩10分、明治時代に海運流通で拠点となった旧別府港のある北浜地区にたたずむ。周囲は古くからの温泉街で、別府温泉のシンボルで有名な砂湯「竹瓦温泉」もほど近い。
いながらにして温泉街をそぞろ歩き気分
界 別府のコンセプトは「ドラマティック温泉街」。館内には石畳の路地や夜店をイメージした空間など驚くような演出がいっぱい。昼は別府湾をのんびり眺めながら足湯につかるもよし、夜には湯治ジャグバンドが繰り広げる楽しい演奏に耳を傾けるなど時のうつろいによってドラマチックな雰囲気が楽しめるのがいい。
設計・デザインを担ったのは、こちらも有名な建築家、隈研吾氏。お風呂に入るのももちろんだが、その前後のそぞろ歩きが温泉リゾートの本質的な醍醐味、という氏の言葉通り、吹き抜け階段の竹とんぼのモチーフなど屋外や半屋外を楽しめる仕掛けが館内にはふんだんに用意されている。

一方、客室は別府湾を一望する壁一面のピクチャーウィンドーとその海の色を引き立てる古代色の柿渋色の対比にはっとさせられる。実はこの柿渋色、別府名所の血の池地獄から着想を得て、別府温泉の熱気や溶岩台地を表現している。周囲の環境に溶け込みながら、新しいデザイン的魅力を発信するというのも隈氏の理念と一致したそうだ。
もちろんお湯も素晴らしい。大浴場の内風呂には源泉かけ流しの「あつ湯」と、温泉成分をじっくり浸透させるための「ぬる湯」の2つの湯船を備える。館内を巡りながら様々な体験を楽しみ、宿の中で温泉街を探訪した充実感が得られるのは、この宿ならではだろう。