ライブ作りは、やり直してやり直して

──川上さんは以前から「ソロコンサートの演出は個人に任せる。だから見るのも本番が最初」と言っていますね。いかがでした?

川上 見やすくて、すごくいいライブでしたよね。毎回この時期になると彼女のライブで勉強させてもらうんですよ。トークの分量だったり、全体の配分だったり、着替えのつなぎだったりを。要所要所にあーちゃんなりの考えが入っているいいライブでした。ただ今回申し訳なかったのは、最初に立てたプランをこちらで形にできなかったことです。入場制限で観客が半分になったので、いつもと同じようには予算が使えなかった。あーちゃんには無理を言って変えてもらったところもありますし、できることは何かを何度もミーティングして。

佐々木 ホント、やり直してやり直してという感じだったよね。そもそも本当にやれるのかやれないのかがわからなかったし、例年とは違うことがたくさんあった。どのパターンになってもできるようにと考えながら進めるのは、これまでにない作業でした。セットリストも1回変えましたし、構成もざっくり変えたりとか。

川上 夏のイベントのように回数を増やせないかという話も出ました(夏のイベントは2日で2回の公演予定だったが、急きょ2日目を2回公演にして1回あたりの観客数を減らそうと試みた)。

佐々木 1日2回にしようかとか、前日にもう1公演できないかとかね。だから夏イベが急きょ3回になったときも想定内でした。それがこれからのライブの作り方なんだなと思ったので。

──過去のソロコンでは最も曲数が少なかったのもコロナのことを考えてですか?

佐々木 そこを悩んだんですよ。観客は半分しか入れられないからチケット代は上がっているんです。だからライブ時間は延ばしたい。でもコロナ対策的には長くやるのは良くない。そのバランスを取るのが難しかった。みんなに気持ちよく帰っていただくには、どこを優先したらいいか。チケット代が上がっているのに曲数を少なくするというのは、苦渋の決断でした。

川上 2時間20分をノンストップで見られる、まとまったいいライブだったと思いますけどね。

佐々木 こんな状況でもタイミング良くやらせていただいたことに感謝です。ネットを見ると「ライブって楽しいね」「ももクロのライブに行きたくなったよ」という反響がすごく大きくて、ライブをみんなとやれてよかったなと。私自身も楽しくて、改めて「ライブするの、好きだな」って思いましたし。

内蔵音声付きサイリウムも準備

──久しぶりに2時間のライブをやってみていかがでしたか?

佐々木 2週間、3週間くらい前からずっと緊張していました。いつもの緊張とは違うんですよ。いつもはライブ前に心臓がバクバクする、高揚感に近いんですけど、今回はリハーサルをしているときから大丈夫かなという不安が大きかった。自分の感覚も鈍っているし、体力も落ちているって自覚もありましたし。でも、ファンの人も不安だと思うんですよ。この時期に有観客のライブに参加するって。だからこそ、みんなを引っ張っていくというか、ライブに向かうテンション感はいつも以上に大事だと思いました。

──そんななかで大活躍したのが、13種類の音声が再生できる内蔵音声付きサイリウム「あーりんコールペンライト」でした(「あーりん!」というかけ声や自己紹介、ソロ曲用のコールなどが録音されており、ボタンを押すと再生される)。

佐々木 面白かったよね(笑)。何をみんなが言いたいのか、どんな音声があったら楽しいのかが分からなくて悩んだんですけど、まさか「あーりん今日も可愛いよー!」があんなに大活躍するとは(笑)。改めて曲中に再生するのはむずかしいんだなとか、トーク中に使える「えー」は入れるべきだったなとか、勉強になりました。

──MC中に聞こえてくる「あーりん」という内蔵音声に、「うるさいなあ」と言っていましたね(笑)。

佐々木 自分で用意しておいてねえ(笑)。でも、そうやってみんなとコミュニケーションを取りながらライブができるのは楽しかった。ああいう試みを楽しんでくれるモノノフ(ももクロのファンのこと)のみんながいるのは頼もしいと思います。ライブを見に来てくれた友達から「みんな、入場したときからサイリウムの練習をしていたよ」と聞いて、さすがだなあと(笑)。自己紹介なんて、タイミング、完璧だったでしょ。やっぱりみんなでひとつのものを成し遂げる、チームワークって大切だなと感じました。

今回分かったのは、コール無しであーりん曲を歌うことに抵抗がなくなったこと(「あーりん曲」と呼ばれる佐々木さんのソロ曲では、観客が「あーりん」というコールで盛り上げる)。ライブでも『SPECIALIZER』『ペンデュラム』『サラバ』『Bunny Gone Bad』のブロックは、みんな叫びたくてうずうずしているのがすごく伝わってきて。もちろん今までも声だけではないと思っていたけど、盛り上がりのバロメーターが声援だったわけじゃないですか。でも声がなくても盛り上がっている、みんなの集中がステージに向かっているのが伝わってくるんです。声だけじゃないなって感じますね。

──帰り道のみんなも、楽しそうでしたよ。

佐々木 ライブにいけない状態が続いた後に、私のライブに来てみたら「こんなだっけ」とがっかりされるのはイヤじゃないですか。いつもより期待度が上がっていると思って緊張していたんですけど、無事開催できて今はホッとしています。ライブに行くハードルが高くなっている中で、みんなが会場にいてくれるのはすごいうれしいなって、しみじみしちゃいました。

[以上、2021年7月15日に取材]

佐々木彩夏
1996年6月11日生まれ。神奈川県出身。2007年、小学生のときにスカウトされ、ももクロの所属事務所であるスターダストプロモーション入り。08年11月、「ももいろクローバー」(現・ももいろクローバーZ)に参加。キャッチフレーズは「ももクロのアイドル」。イメージカラーはピンク。愛称は「あーりん」。
川上アキラ
1974年9月10日生まれ。98年に大学を卒業。同年スターダストプロモーション入社。2008年にももいろクローバーを立ち上げ、現在はももクロのほか、新たなプロジェクト「スターダストプラネット」も担当。

(日経エンタテインメント!編集委員 大谷真幸)

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