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デンシバ Spotlight

地方から都会へ去る女性 地元に戻るのは「4人に1人」

2021/8/22

デンシバ Spotlight

女性が働きやすい職場をどうつくるか、兵庫県豊岡市が主催したセミナー
女性が働きやすい職場をどうつくるか、兵庫県豊岡市が主催したセミナー

総務省が8月発表した人口動態調査(2021年1月1日時点)によると、東京、関西、名古屋の三大都市圏の総人口が前年比で減少しました。13年の調査開始以来初です。新型コロナウイルスの感染拡大で、テレワーク移住が拡大した影響とみられます。人口減に苦慮する地方にとっては朗報に思えますが、楽観はできないようです。

地方にとどまる男性が増える一方で、女性の都市志向には変化がないからです。男女比の不均衡は未婚化を進め、少子化が加速します。人口減対策のため、女性が魅力を感じるまちづくりに取り組む地方自治体も登場しています。

気がつくと、若い女性たちが、まちからすーっといなくなっていました――。兵庫県豊岡市が今年3月にまとめた「ジェンダーギャップ解消戦略」の書き出しです。どうすれば若い女性が豊岡市に住みたいと思ってもらえるか。企業や家庭、地域、学校などで今後10年で取り組む課題を挙げています。

人口減にあえぐ市は17年に若い女性の動向に着目しました。15年国勢調査を基に、10代で転出した人が20代でどのくらい戻ったかを調べると、男性は2人に1人だったのに対し、女性は4人に1人だけでした。「大学進学などで市外に出るのは仕方ない。でも卒業後に戻ってくる大半が男性では未婚率が上がる」(ジェンダーギャップ対策室)と危機感を訴えます。

富山県南砺市は3月にフォーラム「女性が戻りたい、働きたい南砺市になるために」を開きました。UIターンを促す事業はこれまでも実施してきましたが、若い女性に焦点を当てるのは初めてです。地域住民や地元企業の経営者らが話し合い、「男性は家事・育児をしない」「職場でも女性は補助的な仕事しかさせてもらえない」といった女性流出の要因が挙がりました。市担当者は「若い女性が魅力を感じるような職場・地域づくりを進める」と意気込みます。

地方には女性に魅力的な職場が少なく、都市部の企業を就職先に選ぶ傾向はコロナ前からありました。ニッセイ基礎研究所の人口動態シニアリサーチャー・天野馨南子さんは「コロナ下でも女性の志向に変化はない。男性が地元に就職した結果、むしろ男女格差は拡大している」と指摘します。例えば20年の東京都への転入超過は、男性9632人に対し女性はその2.2倍の2万1493人。前年の1.4倍から拡大しました。

多くの自治体は人口の増減に一喜一憂します。ただ若い女性の流出に歯止めをかけないと、未婚化が一気に進み、少子化は深刻になるばかりです。「女性が活躍できる職場をどうつくるか。地方の自治体・企業は真剣に考えないといけない」と天野さんは警鐘を鳴らします。

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天野馨南子・ニッセイ基礎研究所人口動態シニアリサー