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出雲充 ユーグレナ社長

出雲充 ユーグレナ社長

ミドリムシを使った健康食品やバイオ燃料事業などを手がけるユーグレナは創業15周年の2020年、企業としてのフィロソフィー(哲学)を打ち出しました。持続可能かどうかを全ての判断や行動の基準とする「サステナビリティ・ファースト」です。持続可能な社会の実現に向け、スタートアップ企業が果たすべき役割と25年を境に起きるという「価値観の大転換」について、同社社長の出雲充氏が語りました。

(1)イノベーションに実績などない 出資求め501社回る

SDGsの実現に一気に舵、大手企業は不可能

最近、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」という言葉を聞かない日はありません。ESG(環境・社会・企業統治)を重視する投資家からのプレッシャーが強まる中、多くの大手企業もSDGsの実現に向けた取り組みをアピールしています。これに対し、「本気度が足りない」「『やっているふり』をしているだけではないのか」といった手厳しい批判もありますが、それはある意味、仕方がないことだと思います。なぜなら、大手企業が一気にSDGsの実現に舵(かじ)を切るのは本質的に不可能だからです。

例えば、年間数千億円を売り上げ、10万人を雇用している石炭関連企業が「地球のために石炭を掘るのをやめ、明日から風力発電に切り替えます。ただし、10万人のうち9万人をクビにします」と言えるでしょうか。「切り替える」と判断するのはSDGsの観点からは正しいでしょうが、職を突然失う大勢の労働者やその家族にとってはたまったものではありません。雇用を通じて人々の生活や地域経済を支えるという企業の社会的責任の観点から見れば、石炭を掘るのをやめるという判断が正しいとは言い切れません。

そもそも大手企業は従来の資本主義社会の枠組みの中で成功を収めてきた企業です。「会社とは株主のものである」「会社のレゾンデートル(存在意義)は企業価値の向上を通じて株主に利益を還元することにある」「効率を上げて利益を追求し、成長し続けることこそが是である」というルールで戦ってきました。SDGsは根本的にこれらと矛盾します。コストは見合わないし、効率は悪いし、そもそも儲(もう)けることが目的ではない。ですから大手企業がSDGs推進に真正面から取り組むのは困難なのです。

でも、ベンチャー企業ならそれができると思います。ユーグレナは20年、「サステナビリティ・ファースト」を企業のフィロソフィーに据えました。持続可能性を何よりも第一に考え、判断・行動するということです。我々が提供する商品・サービスだけでなく、組織のあり方や働き方、生活の全てでサステナブルかどうかを大事にする。誰かを犠牲にして自分だけが幸せになることをよしとしない。短期的課題の解決ではなく、未来がずっと続いていくためにできることをする。そういうサステナビリティ・ファーストを私たちが追求できるのは、守るべき既得権益もないし、組織が小さく機動的に動けるからです。

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