答えと解説

正解は、(3)生まれたときから一度もピロリ菌に感染したことがない人の胃がんリスクはかなり低い です。

多くの胃がんはヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)の感染が原因で起こることが、今や医学の世界では常識となっています。胃に棲みついたピロリ菌が胃粘膜に炎症を起こし、発がんしやすい状態(萎縮性胃炎)に変化させてしまうのです。そこで、ピロリ菌の存在を調べて、陽性の場合は複数の抗菌薬を使って除菌すると、炎症の進行が止まって胃がんにかかるリスクが下がることが分かっています。

ただし、ピロリ菌の除菌でどの程度まで胃がんのリスクを下げられるかは、実はまだはっきり分かっていません。除菌した時点の萎縮性胃炎の進行度によって、その後の胃がんリスクが変わってくるため、正確な調査をするのが難しいのです。

「除菌による胃がんリスクの低下は、だいたい30%から40%くらいだろうと言われています。リスクは下がるが、ゼロにはならないのです。この点を誤解している人が、医師の中にもかなりいるようです。『ピロリ菌を除菌したら胃がんのリスクはゼロになると言われました』という患者さんがとても多く、そのつど誤解を解くのが大変です」。がん検診に詳しい、近藤しんたろうクリニック院長の近藤慎太郎さんはそう話します。

最初から陰性でも胃粘膜の状態は確認したほうがいい

一方、ピロリ菌検査の結果が最初から陰性の場合も、生まれてからずっと感染していないのか、ある時点までは感染していて途中で自然除菌されたのかは分かりません(注:自然除菌とは、風邪で抗菌薬を飲んだときなどに、意図せずに除菌されてしまうことをいいます)。「陰性だからといって胃がんにかからないわけではないので、胃がん検診で胃内視鏡検査を定期的に受けて、胃の粘膜の状態を確認したほうがいいでしょう」と近藤さんは勧めます。

もっとも、生まれたときから一度もピロリ菌に感染したことがないことがはっきりしている場合は、胃がんになるリスクはかなり低いとされています。ピロリ菌の感染ルートは水と考えられており、上下水道が完備していなかった時代に生まれた人、つまり年齢が高い世代ほどピロリ菌の感染が多いことが分かっています。「衛生状態が良くなったこともあり、若者のピロリ菌感染率は減っています。今の10代の感染率は10%程度と言われているので、この世代が中高年になったときには胃がんは激減するでしょう」(近藤さん)

現在、ピロリ菌の検査と除菌は、保険適用になっていますが、保険診療で検査を受けるには、先に胃内視鏡検査で胃の炎症(胃炎)があることが確認されていなければなりません。保険外でもかまわなければ人間ドックなどのオプションメニューでピロリ菌の検査を受けることもできますが、その際、「ピロリ菌検査を単独で受けることはお勧めしません」と近藤さんは話します。

「ピロリ菌が陽性でも、内視鏡で胃炎などの異常所見が確認されていなければ、保険で除菌治療が受けられません。一方、ピロリ菌が陰性と分かっても、その人が生まれてから一度も感染していないのか、それとも実は感染後に自然除菌されたのかは分かりません。現在ピロリ菌がいなくても、もし以前感染していたら、胃の炎症が進んでいる可能性もあります。その場合、胃がんのリスクは高くなります。胃内視鏡検査を受けなければ、胃の炎症の有無を確認できないので、胃がんのリスクも推測できないのです」(近藤さん)

ピロリ菌が最初から陰性でも、除菌によって陰性になった場合も、胃の状態は定期的にチェックしていくことが、胃がんの早期発見のためには大切だと言えるでしょう。

この記事は、「胃がん検診、『バリウムより内視鏡』の最大の理由とは」https://gooday.nikkei.co.jp/atcl/report/21/012200002/012900003/(梅方久仁子=ライター)を基に作成しました。

[日経Gooday2021年7月26日付記事を再構成]

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