20年3月、ジェイコブと同じ群れの6頭のライオンが、密猟者によって毒殺された。このときジェイコブは危うく難を逃れたが、それから数週間後に、アフリカスイギュウかイボイノシシとみられる動物に角で突かれて、胸に深い傷を負った。また、19年にも、やはり密猟者の仕掛けたくくりわなにかかっていたところを助け出されていた。

ジェイコブが初めてわなにかかって足を負傷したのは、19年10月のことだった。傷は深かったが、ウガンダ野生生物局と、連携する非政府団体が迅速に対応したため、このときは足を失わずに済んだ(PHOTOGRAPHS COURTESY OF KABUNZUNGWIRE MORIS AND MUSTAFA NSUBUGA)

「ライオンの取引は、すぐに阻止すべきです。ただでさえ個体数が激減している多くの群れを、局所的な絶滅に追い込んでしまいます」と、ファンストン氏は訴える。

他の動物も狙ったわなが増えて餌も不足

ジェイコブは、無線追跡装置付きの首輪をはめている。首輪の現在位置が全く動かなくなると異状の恐れがあるため、ウガンダ野生生物局に警告が届くようになっている。ジェイコブが片方の足を失った時、かけつけた局員が中心となって、懸命に治療した。この努力は、専門家や保護団体の目に留まった。

ジェイコブがすむ地域は人気の観光地だが、最近はライオンだけでなく他の動物も狙ったわなが増えている。ブラズコウスキ氏によると、野生動物を捕らえて食べるためだという。

人間の罠で捕らえられる動物が増えて、獲物が不足すると、ライオンたちは食べ物を求めて長距離を移動するようになる。この地域のライオンは、ケニアのマサイマラ国立保護区のライオンと比べて6倍もの距離を移動しているという研究結果がある。また、10年前と比較しても、移動距離は大きく伸びている。

クイーン・エリザベス国立公園とその周辺では、「ライオンの保護が成功するかどうかは、ウガンダ野生生物局と非政府団体との協力関係にかかっています。そして、保護が必要な時と場所を見定めることも重要です」とブラズコウスキ氏は言う。

保護活動家もこれに同意し、ライオンを違法取引から守るには、さらに多くの対策が必要だと主張する。たとえば、ライオンを見守る警備隊の予算の増額や、わなを撤去するパトロール、動物を保護するための連携、そして地元住民との関係強化などが求められる。

ファンストン氏によると、現在残っている生息地のうち、アフリカ南部と東部を中心とする約15~20%の地域においては、ライオンは十分な保護を受けている。

しかし、今のままわなの存在や密猟を放置していては、「あと数年で局所的な絶滅が起こるところも出てくるでしょう」と言い添えた。

(文 DOUGLAS MAIN、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年8月13日付]