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「おもいでばこ」10年の歩み

――「おもいでばこ」についても教えてください。デジカメやスマホなどで撮影した写真や動画を取り込み、テレビで見られるようにするホームサーバーのような製品ですが、操作が簡単で分かりやすい。

2011年発売の初代「おもいでばこ PD-100」(左)。2代目の「PD-100S」(12年)でWi-Fi接続に対応し、3代目の「PD-100S/W」(13年)でスマホを使った写真整理に対応するなど改良を重ねてきた。写真右は現行モデルの「おもいでばこ PD-1000S」

「開発の経緯は『ラクレコ』と似ています。バッファロー(旧メルコ)の創業者である牧誠前会長が、『デジカメはどんどん進化しているのに、写真を見る手段は進化していない。パソコンは面倒臭い。簡単にデジカメの写真を見られる機器を作れないか』と投げかけたところから開発がスタートしました」

――初代製品の発売は2011年11月でした。当時の反応は?

「最初は少し盛り上がったのですが、売り上げ的には厳しかったです。パソコンに詳しいお客様だと『パソコンがあるからいらない』となりがちだし、詳しくないお客様にはよく分からない存在の製品だった」

「なかなか販売が伸びない中、3代目の製品から私が企画を担当するようになりました。そのとき、『おもいでばこ』を使っていた妻から、『写真が見られるのはいいけれど、iPod touchで写真の整理ができるようにならない?』と言われました。テレビ画面を見ながらリモコンで操作すればいいじゃないかと言うと、テレビで写真の整理なんかしてたら、子供がアンパンマンを見せろと言い出すから無理だと(笑)」

――それはそうなりますね。

「そこで13年発売のモデルから、スマホで写真を見る・整理する・ネットでシェアする機能を搭載しました。これで今のコンセプトである『写真の母艦』になりました。それまではテレビで見るだけの機器でしたから」

スマホの写真を子供に見せる

――その頃から、根本さんはブロガーや写真教室などにアプローチし、徐々に人気に火が付いた。そして15年発売の4代目「PD-1000」で、今のようなコンパクトな形状に。世代を重ねるごとに機能を高めていきます。

「5代目からは、コンセプトメッセージを『とっておきは、大切な人と。』としました。写真がたくさん保存できて便利というところから、その写真を大切な人と楽しみましょうと一歩踏み込んだメッセージにしたんです」

「なぜかというと、スマホが普及して写真を撮る機会は多くなったのに、それが親や親戚の間で共有されることはあっても、子供が見ていないケースが散見されたから。親がスマホで子供を撮影しても、当の子供がその写真を見ていないことが結構ある。それは子供に見せる手段がないからです」

現在販売されている17年発売の5代目モデル、「おもいでばこ PD-1000S」。21年には、耐久性の高い監視カメラ用のドライブを使用するなどしたプレミアムモデル「PD-1000S-V/PD-1000S-LV」も登場している

――スマホを持っていない年齢の子供はそうなってしまいますね。かといって、大人としては自分のスマホを子供に使わせるのはちゅうちょしてしまう。

「昔は現像した写真をアルバムにまとめておくので子供でも見られました。しかし今、スマホで撮影した写真を印刷してアルバムにまとめる人は少ないでしょう。『おもいでばこ』ならテレビの画面で子供でも写真を好きなだけ見られます。親が撮影して選んだ写真を入れておくわけですから、スマホを子供に使わせることによるリスクもありません。『おもいでばこ』は、デジタルフォトアルバムを名乗っています。自分や家族で選んだ写真を入れることこそが肝なのです」

――「おもいでばこ」がオンリーワンな存在なのは、絶妙なバランスと立ち位置を確保しているからなのですね。ありがとうございました。

「おもいでばこ」の周辺機器も発売している。写真はデータを自動でバックアップするハードディスク「おもいでばこ 安心バックアップキット」。「おもいでばこ」と並べて設置するマットなどが付属する。DVD-RやCD-Rに保存された写真や動画を取り込むための光学ドライブ「おもドラ」もある

(聞き手 ライター・コラムニスト 小口覺、写真提供 バッファロー、写真 湯浅英夫)

[日経クロストレンド 2021年8月4日の記事を再構成]

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