クックパッドからお金のデザイン、エンジニアの道へ

14年に新卒でクックパッドに入社した。大手企業ではなく、あえて急成長の新興企業を選んだ。加々美さんは「当時の社員数はまだ120人程度。ただ、ユーザー数は5000万人ぐらい。小さな組織だが、社会的インパクトの大きいサービスを展開していた。しかも、クックパッドには優秀なエンジニアが集まっていた」という。

もともと文系の加々美さんは総合職で入社し、企画部門に配属された。コンテンツ編集などにも携わったが、エンジニアに興味がそそられた。将来、起業するにはデジタル技術に熟知している必要もある。2年目で自ら希望してエンジニアになり、プログラム言語「Ruby(ルビー)」の習得に悪戦苦闘した。ただ、有能なエンジニアがひしくめ社内では「輝けなかった」。入社3年目に先輩エンジニアから誘われ、お金のデザインに転職した。

同社は投資家として名高い谷家衛さんが会長を務め、ロボアドバイザー「THEO(テオ)」を使って資産運用サービスを展開するフィンテック企業。入社当初、加々美さんは地方銀行との連携システムの構築などに携わった。

野村出身の中村社長とMBOを実行

まもなくチャンスが到来した。お金の相談に関するイベントを開催した際、予想以上に反響が大きかった。社内で新規事業として立ち上げようという話になり、自ら手を上げた。17年にスタートした新規事業は事業子会社となり、図らずも創業者になった。ただ、業務は実質的には事業部長だった。

しかし、本物の起業家になる日はすぐに来た。野村証券出身で、お金のデザイン社長だった中村仁さんから「もっとコミットメントしたい。独立して一緒にやろう」と持ちかけられ、20年にMBO(経営陣が参加する買収)を実行。400F社長の中村さんとともに主要株主になり、経営に参画した。

400Fという社名はゴッホが生前中に売れた唯一の作品「赤い葡萄(ぶどう)畑」が400フランだったことにちなんだ。わずか400フランから無限大の価値が生まれるという思いが込められている。「上野千鶴子門下生」は多くの社会問題を解決する起業家になれるのか。加々美さんの挑戦は始まったばかりだ。

(代慶達也)